火曜日、水曜日、木曜日…。日を重ねるごとに編集作業は佳境に入ってくる。お互いのゲラを読み込み、改善すべき点を議論していると時間はあっという間に過ぎた。興奮した脳みそを落ち着かせるためには、アルコールの力も借りたのも1度や2度ではない(要するに飲みに行ったということですが…)。編集長の厳しいチェックを受け、22ページの特集が何とか「形」にまとまったのは、金曜日の夜遅くだった。
12km付近で早くも歩き出す

胃の調子が悪かったので、「出走を取りやめる」という選択肢も頭をよぎった。だが、倍率が高い東京マラソンだけに、次にいつチャンスが巡ってくるか分からない。レース当日の朝、体調はかなり改善した。これなら行けると、私は自己責任で走ることを決めた。
そして9時10分、スタートを知らせる号砲が鳴り響いた。都庁前を紙吹雪が舞う中、ランナー集団はゆっくりと歩き出す。Eブロックにいた私がスタート地点を通過したのは7分過ぎだった。最初の3kmぐらいは混んでいたので、転ばないように注意しながら走った。
手元の走行記録を見ると、スタートから11kmぐらいまでは1kmを5分台で走っている。しかし、日比谷公園を過ぎた辺りから胃の痛みが無視できなくなってきて、12km付近で早くも歩き出してしまった。
足の痛みであれば、ゆっくりと歩いたり、ストレッチをしたりすれば症状が改善することがある。ところが、胃の痛みはなかなか治らない。数分ごとにぶり返す胃の痛みをごまかしながら、歩いたり、走ったりの繰り返しだった。

東京マラソンでは数kmごとに救護所があり、医療サービスが受けられる(その他に「ドクター」マークを付けた人が何人も走っていた)。20km付近の救護所に入り、胃のクスリがないかと尋ねた。すると対応してくれたドクターらしき男性には「胃薬なんてここにあるわけないじゃん。痛いならさぁ、リタイアしちゃえば?」と軽い口調で諭された。
医者としては至極真っ当なアドバイスだと思う。ただ、「ああそうですか」と聞くわけにはいかない事情が私にはあった。東京マラソンに参加することをいろんな人に言ってしまっていたし、この日は友人や会社の同僚なども応援に来てくれていた。そうしたものを背負って走っているランナーの思いも(ちょっとぐらい)尊重してもらいたい…。そんな気持ちで救護所を後にした。
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