松浦:これは、例えばヘルパーさんの話し方でもある程度おなじ力があるんじゃないんですか。うちに来ていたベテランの方なんかの1人、2人はやっぱりこれができていたような気がするんですけど。

小澤:だとすれば素晴らしいヘルパーさんです。この「わかってくれる」と感じさせる感覚は、これからの時代に求められるテーマだと思います。

―― お恥ずかしい話でしたが、40過ぎの中年が仕事の失敗からこれ一発で立ち直るわけですから、お互いの苦労をわかり合い、「支える」意識を持つことができる組織って、これは相当強いですよね。家族にせよ、介護チームにせよ、さらに言えば、会社も社会も。

できない自分を認めることが、レジリエンスの基点

小澤:そうです。これからの時代、介護や高齢化で働き方はいわば強制的に多様化するわけです。介護をしながら仕事をする人、育児をしながら仕事をする人、いろいろな状況の人がたくさん出てくる。

 みんなが余裕があって、「いいよ、カバーするよ」とは言えない。みんながみんなの苦しみを抱えながら、フルタイムで働けない人が増えていく中で、やっぱり職場のチーム、会社、さらに社会は、お互いの苦しみを「分かってくれる人」として支え合う、レジリエンスを持つ仲間がいなければ、やっていけなくなるんじゃないでしょうか。

 さきほども言いましたが、「介護も仕事も百点」は無理なんです。大きく言えば、社会保障費を増やしながら減税して経済を活性化、というのも相当無理があります。完全な答えは出せない。不幸や苦しみや不公平は残る。そこにこだわって苦しみ、怒りを溜めていくか、苦しみを抱えつつ穏やかに生きていくか。

松浦:そこに帰ってくるんですね。

小澤:だから「60点でありながら、これでよい」という、相手にも優しくなれるために、できない自分を認めるレジリエンスが、しなやかに生きていくために欲しいんです。そして、レジリエンスを得るには、「分かってくれる人」が、お互いを支え合うことが必要です。そういう意識を企業が持つことが、実は、日本企業がしなやかにこの後の時代を生き延びていくために必要なのじゃないか。そう思うんです。

(おわり)