松浦:言っても不愉快にさせるだけかと思ってあまり話さなかった。

小澤:介護の話って、なかなかしにくいですよね。

松浦:しにくいです。

 そうか、そうですね。そう考えますよね。

小澤:話題として、職場や仕事先で「実は親の介護で」というのは、なかなか……

松浦:言い出せる話ではない。むしろ本を出してからですね。例えば「Facebook」でつながっている高校の同級生からの反応がかなりあります。同い年ですから、だいたい同じような状況にある。

 なるほど。「うちの親も」というお話が来るということですか。

松浦:時々そういうのが来る。「読んだよ」って。

 「松浦なら分かってくれそう」と思いますもんね。

小澤:50代というのは、人生でのそういうフェーズなんですね。

 話を戻しますけれど、じゃあ、やっぱりずっとストレスをため込んでこられたんですか。

松浦:ため込んでというか、まあ、結局吐き出す先になったのは、これにも書いたけど、結局映画とオートバイ、という。

小澤:それが、松浦さんの男の美学なんですか。

 ですか。

松浦:いや、美学なんて考えたこともありません。

小澤:美学ではない。

 矜持というか。

松浦:「そういうものだと思っていた」というのが正しい。特段、気負いもなく。だって、他人に話したところで、状況は何も変わらないんだもの。聞かされる方も迷惑だろうし。

介護を自分だけで抱え込んで、半年で辞めていく

 それはその通りですが、状況は変わらなくても、愚痴るとすこしは気持ちが楽になりません?

松浦:そうなの?

 うわぁ。

小澤:学校の教師の組合の先生からお聞きしたのですが、介護離職をする方の約半分は、他人に相談はしてないんだそうですね。

 半分ですか。

小澤:ええ。介護に入ってだいたいもう半年で、誰にも相談しないで、突然辞める。

松浦:誰にも相談しないと半年で限界を迎えるということですか。介護する人の症状や状況にもよるのでしょうけれど、自分の実感と合ってますね。

 半年くらいで「これは勤めながらでは無理だ」と判断される。

小澤:それで急にもう辞める。せっかく労働組合員なのに、相談しないまま辞めちゃうんだ、とおっしゃっていました。

 つまり、介護というテーマというのは共同体の中でさえ話題にしづらいんです。特に男性はそうかもしれません。だから、介護の本が、松浦さんの本のように売れるというのは、実は私には驚きなんですよ。「介護」という言葉がタイトルにつくとみんな嫌うんです。

 そうなんですか。最初は、本も連載タイトルの「介護生活敗戦記」にしようと思っていましたけど、書籍担当の女性編集者の提案でこのタイトルになりまして。

小澤:それは炯眼ですね。

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