小澤:いえ、認知症の方でもがんの方でも基本的にはポイントは一緒です。「どんなことがあれば、ご本人と家族が穏やかになれるか」にこだわっています。

穏やかに。死が近いという苦しみの中でも。

松浦:具体的にはどういうことになるのでしょう。

小澤:いま改めて聞かせて頂きましたが、松浦さんが介護をお1人で始めたころは「全部自分でしなきゃいけない」と思い込まれていた。そういう時期がおそらく一番大変ですよね。実はお話を伺いながら、「もし自分が松浦さんの介護にケアマネなどの立場で関わったら、どんなふうにするかな」と思っていました。

そうだったのですか。で、いかがですか。

小澤:直感としては、松浦さんは職人っぽく見えるんですね。

といいますと。

小澤:ゼロから100まで、自分で納得しないと気が済まない。そこに、松浦さんの中の不器用さを感じるんですね。悪く言うと「人の言うことは聞かない」タイプ(笑)。

松浦:まあ、確かに。

認めちゃいました(笑)。

小澤:ということは、松浦さんの場合は、「人からあれこれ指図されるよりは、自分でいいと思ったことをした方が穏やか」ということなんです。だから、もし自分が松浦さんの担当だったら「松浦さんが穏やかになるための条件は、現状分析と、選択肢を示すことだ、それを探そう」と思うんですよ。

あ、なるほど。「最善手はこれです、こうしましょう」じゃなくて、選べる手と背景説明を丁寧に。

「穏やか」は「分かってくれている」という気持ちが産む

小澤:「穏やか」というのは、ただ痛みがないとか、手間が少ないとか、それだけじゃないんですね。その人の人間性、性格とか生い立ちから含めたその中で、「自分が大事にしていることを、相手の人が大事と思ってくれる」ことが、穏やかさにつながるんですね。だから「この患者さんは『認知症だから』こうだ」とか、介護者の場合なら「この方は『働いている』からこうだ」とか決めつけるのは好きじゃないんです。同じ条件でも、たぶんその人が「穏やか」になれる条件は違うだろうと。

松浦:その人なりなんですね。

小澤:そうです。ちなみに松浦さんのお母さんのご出身は?

松浦:茨城です。母方の祖父が海軍の軍人で、幼少時は日本中を転々としています。

小澤:そうすると軍港のある町。

松浦:そうです。一番懐かしがっていたのは逗子でした。そこから横須賀に通う父を見送った話をしていました。

小澤:そういったお母さんの生い立ちを意識した上で、たぶん関わらせていただくと思います。

松浦:なるほど。

小澤:たぶんお母さんは、海軍の軍人さんのお父様を誇りに思っていると思うんですね、直感としては。だから話題としては、ご本人の幼少期から、どんな関係性か分かりませんが、どんなお父さんだったのかとか、誇りとか大事に思っているであろうお父さんの話を聞きながら、お母さんの話を聞いていくかなと思いますね。そこがつながると、話しながらご本人の表情が変わるんです。そこから、お母さんご自身が気づかなかった、大切にしていること、思い出の中にある大事なものが見えてくる気がするんです。

松浦:いや、そういうことは考えたこともなかったですね、家族なのに…。

(次回に続きます)

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