平川:ただ、本にも書きましたけど、あの時代の人たちの生活様式というか、高度経済成長をずっと生きてきた人たちは、とにかく何でも余分に買うんですね。お金もないのに、安い物をたくさん。

松浦:それは、なくなる恐怖みたいなものがあるということでしょうか。

平川:何なんですかね。商店街の付き合いみたいなものもありますね。だから、買ったときのセロハンの袋の中に入ったままの下着とかがたくさん出てくるんですよ。それでもう忘れているんです。

松浦さんのお母様はため込まれていましたか。

松浦:それなりに物は貯めていました。ただしうちの場合は、10年前に父が亡くなっているんですけれども、そのときに母と兄弟と一緒になって1回、家を片付けたので、大きな手間ではありませんでした。

“見事な最期”でも、家族の気持ちは

平川:おやじさんのときはどうだったんですか。

松浦:これが、がんで最後まで頭ははっきりしていたので、「もうこれはあかん」となった時点で、自分で片付けるだけ片付けていきました(「父の死で知った『代替療法に意味なし』」)。余分な本も全部整理して。古い友達が日本中にいるので、歩けるうちに全部行って。それから満州生まれだったので、自分の生まれた町に最後に行って。

平川:寝込んだりはしなかった?

松浦:最後は病院で3週間入院して亡くなりました。

言っちゃ何ですけど、死に方としてはうらやましいような。

平川:いやいや、それもどの年代に生まれたかということにすごく関係があると思います。内田樹のお父さんがそうだったんですね。最後は自分で絶食して、そのまますっと亡くなった。

松浦:うちも最後は「もう治療はいらん」と拒否しちゃいましたからね。でも、それはそれで、残される方は辛いんです。

平川:そうですよね。そういうふうに言われた家族は、辛いですよね。

(後編に続きます。明日掲載予定です)

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