取り出してみると、それは「C」で始まる「女性の自立」の魁として名高い、世界的ブランドの袋でした。N市ではそう多くの店では扱っていないはずで、わざわざ百貨店まで出かけたのでしょう。いったい母は何を買ったのか。もういちどテーブルを見直すと、さりげなくフェイスクリームの瓶が入った箱が。なぜさっき気づかなかった!
「母さん、これは?」
「あ? あー、化粧品」
「うん、見れば分かるけど、あのこれいくらくらいするの」
「さあ、いくらだったかしら(ちょっと目を逸らす)」
たまたま、箱にお値段が貼ってありました。
わが美しき愛妻様が見たら卒倒しそうな数字です。
高い化粧品も、心のハリ…か?
「…うわっ! た、高っ!」
「でもねえ、ひと瓶で2、3カ月は使えるのよ」
「いや、それでもこれはたいへんな高級品じゃない? …あー、肌が綺麗なのはもしかしてこれのせいなのか」
「そうでしょ、やっぱりいいものは効くのよ♪」
生きていく甲斐のひとつとして、もしかしたら高くはないのかもしれません。が、家庭の平和のために、このことは墓場に持っていこう、愛する妻がN市を訪れる際には、家の中で「C」のロゴが決して目に入らないようにしよう、と密かに決心しました。
これまで気づかなかった「膝の痛み」と、そのせいか歩行がかなり厳しくなっている様子が気がかりです。しかし、初日はこのへんでタイムアップ。
明日は、連載の中で「親の介護に迷ったら、まず『地域包括支援センター』!」(こちら→「「ん? ひょっとして認知症?」と思ったら」)と松浦さんが書いていた施設を訪ねてみることにします。
(つづきます)
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