松浦さんとは宇宙関連の連載を担当させていただいていたんですけど、介護のことは一言もおっしゃらなかった。お母様が施設に入られた後、初めて、「今まで実は」と言われて、びっくり仰天して、じゃあ、それを書いてくださいとお願いしたのが「介護生活敗戦記」なんです。

松浦:書いてくださいと言われて驚いた(笑)。記事になるとは思ってもいなかったので。

スー:よかったですね(笑)。

 そのとき松浦さんに「なぜ今まで私に教えてくださらなかったんですか」とお聞きしたら、「だって言っても何も変わらないだろう」と。

スー:そうそう。男性からよく聞く台詞です。でも、人に話すだけで変わることもある。会話って、すべてが即意当妙に解決策を出さなきゃいけないものでもないと思うんです。相手に解決できないこと、解決してほしくないことは話すべきではないという思い込みが強い男性にもよく出会いますが、無駄話の中からヒントをもらえたりとか、情報をもらえたりということはとても多い。私たち無駄話のプロは、それを確信しております(笑)。

 とはいえ、時代も変化しています。30代だと、同じ幼稚園や小学校に通うお子さんを持ちのお父さんたちが、パパ会をやっていらっしゃったりするんですよ。問題は、私たちの世代ですよね。これから親の介護に直面していく世代。松浦さんのように、知らない人たち(ヘルパーさん)が入れ代わり立ち代わり家に入ってくる環境に順応できる人ばかりとも限らないですし。

コミュ力なんて、人の話を聞かなくても大丈夫

松浦:その話、まさにNHKで介護殺人の番組を作ったディレクターの方がしていました。男性が多いそうですが、ひとりで悩んで苦しんで、結局もう話すことを拒んじゃう人がいる、と。公的介護の立場でその人を支援する方が、コミュニケーションの糸口をつくるのにものすごく苦労するんだそうです(「普通の人が親を殺す『介護殺人』の悲劇」)。

スー:コミュニケーション能力は後からも培えるものだと思います。

松浦:そうなんです。それに、実はたぶんそんなに難しくないんだと思うんです。変な言い方ですが、実はコミュニケーション能力の中には「人の話を聞かずに自分がしゃべる能力」というのがあるんじゃないでしょうか。99歳まで生きた私の祖母は、晩年、女学生時代からの友達がそこそこ近くに住んでいました。2人とも90歳後半まで、ぼちぼち会っていましたが、片方は耳が遠くなって、たまに相手の耳に口をつけて話していたりして。これ、もう会話の意味が通じているんだか通じてないんだか分からない。

スー:言いたいことを言っているだけと。

松浦:そう。

スー:それ、私は15歳ぐらいからずっとそうですよ。それもコミュニケーションの楽しさの1つです。

松浦:そうそう。でも、会ったあとはなんだか楽しそうな顔をしている。

スー:そうそう。楽しいんです。お互い、相手の話は聞いてないですけどね(笑)。

(次回に続きます。明日掲載予定です)

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「介護生活敗戦記」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。