スー:「どんどん何かが欠けていく、崩れていく」という恐怖と背中合わせの文章を書いていらっしゃると思いながら読んでいましたが、あるときから、はいはい、もううちはこれがデフォルト(初期設定)。はい、また1つ(できることが)減りました、じゃあ、次どうしましょう、と文章が明るくなっていらっしゃった。そこに希望を見ました。

松浦:たぶんそう読めたとしたら、さっき触れた「外部」が入ったことです。特にヘルパーさんが家に入って1日1時間なりやってきてくれると、そこのところで外との情報的なつながりができるんですよね。

スー:そうですよね。

松浦:それはものすごく大きい。この本を出してから対談や取材を受けた中でよく言われるのは、女性の方は身近に必ず息抜きの場をつくるんだけど、男性で介護をする人はこれができずに、煮詰まる人が結構多いということです。家族がなくても、外部と接していく方法はあるのに、どうも男性はそれが苦手ということらしい。

男性は、辛い時に独りになりたがるんですね

スー:50代とか40代、私と同世代ぐらいから上の男性で、これはちょっとどこかのタイミングで何とかしないとマズイのでは? と感じた点がいくつかありました。その世代の男性は、幼少期に炊事や洗濯や掃除、つまり家事全般を上手に執り行うことに対して周囲からほとんど期待されないまま育っているのではないでしょうか。よくも悪くも女性はその手の期待をされてきて、上手下手はあるんですけど、家事に対して抵抗が少ないとも言える。

 男性の場合は、介護のタイミングでほぼ初めて家事をやるという方もたくさんいらっしゃるでしょう。松浦さんは最初から比較的お料理ができた方だと思うんですけど、あのレベルからいきなりできない人はたくさんいるかと。そうなると、必要となるまえに料理を練習しておいた方がいいでしょうし、洗濯、掃除を効率よくやる方法を意識するとかもそうですね。

 そうそう、松浦さんは、「煮詰まったらバイクに乗って映画館」と書かれていました。あれを読んだときに、「あ、男の人はやっぱり辛いとき独りになりたがるんだな」と思って。もちろん、これも個人によるとは思いますが。

松浦:(驚いた様子で)……そうですね。それはそうです。今言われて初めて気が付きました。人と話にいって愚痴を言うんじゃなくて、外部を切り離しちゃいたくなっちゃう。

スー:私が同じ状況に陥ったら、ばんばん友達を呼んで、ぎゃんぎゃんしゃべっていたと思います。そこでいろいろな情報が入ってきて、井戸端会議のなかで「うちのおばあちゃんの時はこうしたよ」とか、たぶん話すんですよ。これも拙著には書きましたが、うちは実家を撤収するときに全部友達に手伝ってもらっていますし、友達にずいぶん助けられました。

 突き詰めていくと、「男の子なんだから泣いちゃだめ」というような、子供のころからの呪縛が男性にもある。人前で、素面で、弱音が吐きづらい。弱っているところを人に見せるのは恥だとか、ぐちぐち言っている男は情けないという男性に掛かりがちな社会圧を変えていかないといけないのではないかと思いました。男同士で介護にまつわる愚痴を言い合ったり、情報交換したりが抵抗なくできる社会にしていかなきゃいけないな、と。

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