母を預けることを決意する

 ショートステイなどの施設を使って、家族と本人を引き離すというのは家庭内暴力が発生した際の基本的な対応なのだろう。11月、12月と、ケアマネTさんは、11日間のショートステイの後3日間の帰宅、また11日間のショートステイと3日間の帰宅というローテーションを組んだ。

 公的介護保険の補助が出るとはいえ、ショートステイには1日5000円程度の出費が伴う。収入が激減している私にはかなりきつい状況だ。ありがたいことに、共働きをしている妹が、緊急に送金してくれたので、収入的危機は回避できる見通しがついた。

 ケアマネTさんと話し合い、自宅で私が中心になって母を介護するのはもう限界であって、ここから先は施設のプロに母を託するべきであるということになった。

 私の気持ちはといえば、悔悟と安堵がぐるぐるに混ざったものだった。

 「ここまでか、ここまでしかできなかったか、もう少しなんとかならなかったか」と、「これでやっと終わる」が入り交じってぐるぐると身の内を走り回り、母がショートステイに行っていても、あまり休息できたという実感はなかった。

 実際、まだ安堵できる状況ではなかった。老人介護施設には定員があり、昨今の老齢人口の増加によってどこも混雑していた。望んだからすぐに入居できるというものではないのだ。

 一言で老人介護施設といっても、その種類は非常に多い。

 大きくは、健常な老人の入居する施設と、認知症などで介護が必要とする老人向けの施設とに2分され、さらに公的施設と民間施設とに分かれる。

 これだけで区分が4つあることになるが、それぞれ規模や目的によってさらに細かい種類が存在する。大人数の施設、少人数の施設、生活していくことが目的の施設に、医学的な治療やリハビリテーションを目的とした施設などなど。

 母のように取りあえず目立った疾患はなく、老衰とアルツハイマー病により要介護3の認定を取得している場合には、「介護が必要な老人が、生活を営んでいくための施設」が、入居の対象ということになる。

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