失禁の量が増えて、朝起きると介護ベッドのシーツを汚していることが増えた。吸水量300ccのリハビリパンツを使っていたのだが、それでは足りなくなり、寝る前には600ccのリハビリパンツをはかせることにした。例によって「こんなにもこもこで感触の悪いもの、はきたくない」と主張し、ヘルパーさんたちと共同で、はいてもらうように持って行くのに大変苦労した。

 失禁は家にいるときだけではなく、デイサービスに行っている最中にも起きるようになった。リハビリパンツの吸水量を超えて尿が漏れてしまうのだ。このため、デイサービスに行く時に替えのズボンを持たせることになった。汚したズボンはビニール袋に入って戻ってくる。母が帰ってくると、まず汚れたズボンを洗濯するのが日課となった。

失禁ズボンの中の、リハビリパンツ

 8月の半ば、デイサービスからの帰宅後、母の荷物に入っていた失禁で汚れたズボンを洗おうとしてトラブルが発生した。ズボンの中に、使用済みのリハビリパンツが入ったままになっているのに気が付かず、そのまま洗濯機に放り込んで洗ってしまったのだ。

 リハビリパンツの尿を吸った吸水ポリマーが洗濯槽の中に飛び散り、ズボン、そして一緒に洗った洗濯物に付着し、大変なことになった。一度全部洗濯物を出して、洗濯槽を可能な限り掃除する。床一面に新聞紙を敷き詰め、洗濯物を空中で叩いて吸水ポリマーの粒を落とす。

 ズボンの中にリハビリパンツが残っていたのは、明らかにデイサービス側のミスだ。だが、これは責められないぞ、と思った。

 玄関に求人ポスターが貼ったままの小規模多機能型居宅介護施設、なかなかKさんの代わりの人が定着しないヘルパーさん、そしてこのデイサービス側のミス――おそらくだが、全部人手不足が原因だ。

 現行の公的介護保険のサービスは、人手不足で維持できるかどうか難しくなっているらしい。

 が、たとえそうであったとしても、私は抜本的な制度改革を行う立場にはないし、その知恵もない。自分にできること、やらねばならないことは、母の介護だ。状況がどうであろうと、母を介護し、母の人生をサポートし、きれいに全うさせねばならない。

 人生が映像作品なら、納期が許す限りにおいてリテイクできる。が、現実は待ったなし。今、この瞬間にうまくできるか失敗するかだけなのだ。

収入減がストレスを激増させる

 介護に割けるリソースは無限ではない。母の失禁の始末と汚れた衣類の洗濯、歩くのを嫌がる母をせっついての散歩、各種の通院のつきそい――やらねばならないことは増えていき、私にかかるストレスは、再度深刻になっていった。

 それに輪を掛けたのが、収入の減少だった。