11月に入り、私はケアマネージャーのTさんに「介護認定を要介護1から2に上げることはできないか」と相談した。

 公的介護保険では、認定の段階によって毎月使える点数が変わる。要介護1よりも2、2よりも3と、症状が重く認定の段階が高くなるほど使える点数が増え、様々な介護サービスをより高頻度で利用できるようになる。アルツハイマー病の症状の進行で、崩れかけている介護体制を、より多くのサービスを導入することで建て直そうと思ったのである。

 介護認定の見直しは通常は年に1回だ。が、年度の途中で症状が重くなったという場合には、利用者の側から見直しの申し立てを行うことができる。手続きそのものは、利用開始時と同じだ。主治医の意見書を添付して申請書を提出すると、市役所からの聞き取り調査があり、月に1回の介護判定会議で、見直すかどうかが決まる。

 「通るかどうかは別として、そういうことならばまずはやってみましょう」とTさんは言い、私は11月に介護認定の見直しを申請した。

介護認定の見直し失敗、そこに意外なアドバイス

 2015年12月に出た判定は「要介護1に据え置き」だった。私はがっくりした。が、ここでTさんは思ってもいなかったことを提案した。

 「主治医の先生を代えませんか」
 と言うのだ。なぜか。

 「厳正に審査を行うように制度は作ってあるんですが、実際問題として要介護度の判定は、色々な要素に左右されてしまうんですよ。中でも主治医の先生が出す意見書は、かなりの影響力があります。お母様の状態を考えると、ここで思い切って主治医の先生を代えて、もう一度見直しを申請すれば、あるいは通るかもしれません。申請自体は何度もできますから大丈夫です」。

 これはやってみる価値があるかもだ、と私は考えた。

 というのも、2月からかかっている総合病院のA医師は、この時期総合病院の院長も兼務していて、非常に多忙なのが診察を受けていても見て取ることができたからだ。意見書は封をした封筒に入って渡されるので、患者側が読むことはできない。が、あの多忙振りからすると、あまりきちんと母の状態が記入されていないのかもしれない。

 10カ月以上、毎月1回の診察を横で見ていて、(A医師の)アルツハイマー病の診察とは、「患者の状態を調べて投薬量を加減する」ということだと分かっていた。母の場合は副作用が出なかったので、診察は医師との対話による精神状態の把握が主で、投薬量の調整もまったくなかった。特に総合病院しか保有していない医療設備が必要な治療というわけではない。

 総合病院に通う意味があるとすれば、新薬の臨床試験に参加できる可能性があるということだが、すでに母はそのチャンスを逃してしまっていた(「母に認知症新薬の臨床試験の誘い、そして幻覚」参照)。

 ならば、総合病院よりも通いやすい近所の医院で診察を受けても構わないのではないか。

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