幸いなことに母の場合、毎日いつも過食が出るということはなく、時折そういうことが起きるという程度だったが、それでも台所の管理には細心の注意が必要になった。

 すでにルーチン化してはいるが、調理が終わったら、ガス元栓は必ず閉めたことを念入りに確認する。トースターは使ったらコンセントを抜いて、高い戸棚の中にしまう。炊いたご飯は、炊飯器のジャー機能に頼らずに、すぐに小分けしてラップで包み、冷凍する。パンも常温の戸棚に置かず、中が見えない不透明のポリ袋に入れて、冷蔵庫の冷凍室に保管するようにした。

 ここまで注意して、むやみに食べることができなような環境を作っても、冷凍しておいた食品を取り出しては調理を試み、諦めてその辺に放置するということは度々起きた。冷蔵庫に取り付ける鍵があると知り、通販で購入してみたが、我が家の冷蔵庫には付かなかった。

ふたたび始まったストレスフルな介護生活

 排便に失敗してトイレを汚すということも、しばしば起きるようになった。

 多くは、便座やトイレの床に便が付着するという程度で、すぐに拭き掃除で対応できるレベルではあったが、時にはべっとりトイレマットに便が付着しているというようなこともあった。こうなると、マットを流水にさらして便を流してから、塩素系漂白剤に漬け込んだ上で洗濯機にかけて洗わねばならない。けっこうな手間だし、対処する私の精神的ダメージも大きい。また、ここまでの便漏れになると、着衣を点検して汚していたら着替えさせねばならない。

 一度は、気が付くとトイレが詰まって、便の混じった水が溢れているということもあった。尿漏れパッドを便器に流して詰まらせてしまったのである。自分で詰まりを直そうとしたのか、母はトイレットペーパー、さらには何を考えたのか水には溶けないティッシュペーパーまでを便器に突っ込んだので、詰まりはちょっとやそっとでは解消できないほどひどくなってしまっていた。

 この時は、まずホームセンターに走ってラバーカップを購入し、それから便混じりの水に手を突っ込んで、母が詰め込んだティッシュやらなんやらを引っぱりだし、最後にラバーカップを使って詰まりを解消した。

 いやもう、頭がくらくらした。
 なんでこんなことを自分がしなくてはいけないのか。こんな仕打ちを母から受けるほど、自分はなにか悪いことをしたのか。

 母に向かって何を言っても、なんともならない。怒っても無意味だ。それでも、自分の内側に行き場のない怒りと徒労感が鬱積していくのが分かった。

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