介護認定にあたっては、母が素直に市の調査員の聞き取りに応じてくれるか、はらはらした。案の定、不機嫌になり「なんで私がこんな質問に答えなくてはいけないの」と言い出したが、なんとかなだめて、平穏に聞き取りをやり終えた。調査員は母だけではなく、介護を行っている私からも聞き取りを行う。

 事前に複数の老人介護の関係者から「嘘はいけません。その一方で、生活の維持に困っていることを介護する側から強調するのはむしろ必要です」と言われた。「大丈夫です」「なんともありません」と強がっていると、実態よりも低い認定が出て、後々困ることがあるのだという。努めてフラットな調子で、私は調査員に向かって、自分に尋常ならざるストレスがかかっていることを訴えた。

判定は「要介護1」

 5月半ば、認定が出た。母は「要介護1」という認定を受けた。

 言葉は似ているが、「要支援」と「要介護」では、担当する組織が異なる。要支援では地域包括支援センターがサービスの支援を行う。要介護となると、市区町村と契約する居宅介護支援事業者に所属する「ケアマネージャー」という職種の人が担当者となり、本人の状態と使える点数とを勘案して介護計画を作成し、介護サービスを利用することになる。

 ケアマネージャーは、かなり家庭の内情に立ち入ってサービスの設計をする。当然、人間的な相性はあるので、交代を要求することも可能だ。

 地域包括支援センターからの紹介を受けて、母の担当ケアマネージャーになったのは、Tさんという30代の男性だった。幸運なことに、Tさんと私はかなり緊密な協力関係を築くことができた。この後、ことあるごとに私はTさんに助けられることになるのである。

 が、その前には、もうひとつ、「母が介護サービスを受けることに慣れる」という関門が待ち構えていたのだった。

この記事はシリーズ「介護生活敗戦記」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。