Y:そういう意味では、介護離職とかは非常に辛いですね。更にいえば、社会から介護を見えなくする、隔絶することで、伝承も難しくなりますね。

松浦:たぶん歴史的には、いまなら救える人を、隔離して死なせてきた事例っていっぱいあるんでしょう。取りあえず家に寝かしておく、あるいは座敷牢に閉じ込めちゃうとか。でも、江戸時代なんかに比べれば、はるかに今のほうが生産性が上がっているわけですよ。弱者を社会で抱えていくということは、これだけ上がった生産性を、我々はどう使うかという話なんですよね。

川内:そうですね。

松浦:超高齢化社会を、ソフトランディングというか、できるだけ衝撃が柔らかく済む形で受け止めるやり方を考える場合、方法は、まず間違いなく「昔に戻ること」じゃない。いま「厄介者は死ねばいい」とかいっている人は、自分がいつまでも元気で健康であるという、根拠のない前提でものを言いながら、どれだけ現代の社会制度の恩典を受けているのかを完全に忘れています。

 年老いた自分が江戸時代にタイムワープして、同じことが言えるか、あれこれ想像してみればいいと思う。知恵を尊敬される長屋の長老にはなかなかなれないですよ。多くの人は劣化した楢山節考になるんじゃないかな。「いやだいやだ」とかいって暴れながら、息子に山に捨てられるとか。

Y:うへえ。

一度は外資系コンサルに入社したのに

松浦:個人で抱えることが出来ない大きな問題は、もう、社会全体で、柔らかく受け止めていくしかない。高齢者の看取りや認知症患者の介護はそういう課題だと思います。

川内:本当にそうですね。実は私は大学の4年間で介護保険の研究をして、結局介護の仕事に最初は就かなかったんですけど、それは何でそうしたかというと、しっぽを巻いて逃げたわけですよね、これは無理だと。

松浦:それは、介護保険が制度として持たないと判断したということですか?

川内:といいますか、4年間頑張って勉強したけど、この制度の中で自分が働くのはどうなんだ、身が持たない、危ない、もっと儲かる仕事はいっぱいあるし、と思いました。実際に障害者施設に行き、特別養護老人ホームに実習に行って、そこで働いている人の実情とかを見て、「これはだめだな。財政的にもどう考えたってあんなに大盤振る舞いしたら早晩崩壊するんだろうし」と。そう自分に言い聞かせて、介護関連に就職するのをやめたわけですね。

Y:すごく妥当な決定のようにも思えますが……。

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