松浦:ここで「家庭のことだから」と言っちゃうと、そこでもう止まってしまうんですよね。

川内:そうです。確かに家庭のことなんだけど、でもそれも実は会社にとっても働く側にとってもすごく大事なことですから。

松浦:そうなんです。先ほど(前回参照)の「介護なんかをやっているやつは辞めてもらった方がありがたい」という考え方って、あれは代わりがいっぱいいた時代の発想なんですよね。今はそれをやったら人がいなくなってしまう。まだあまり気が付いてない人もいるみたいだけど(笑)。

川内:危機感が本当にある人、ない人、危機感がありつつも具体的な施策まで取り組めている組織と取り組めてないところ、施策を、制度を作ることに終始してしまっているところと、ちゃんと一歩一歩踏み出しているところと、すごく違いが出ると思います。たぶんここからもう10年いらないです、4~5年で大きく差が付くでしょう。マイナス面ばかり気にされますが、介護の支援を受けた社員さんの、その会社に対する感謝の気持ちって、ものすごく強いですよ。

Y:これはそうなりますですよね。

川内:一生懸命施策を打っても、なかなか社員に届いていない、という会社さんもあります。そういうところも、実際にセミナーや個別相談の事例を、匿名で積み上げていくと、「こういう対応が望まれていたのか」と気づけて、一気に浸透することもあります。とはいえ、なかなかすべての会社がそうでもないという感じです。

介護を相談=弱みを見せること

松浦:あとは企業トップの心構えかもしれません。今の日本の、特に大きい会社のトップ層って、やっぱり僕らよりもさらに上の世代、「長男の嫁が介護を背負う」ぐらいの経験しかなくて、そうなると「自助努力だろう」という発想を抜けるのが難しいだろうなと思います。しかももう自分の親の介護が終わっているから、他人事でしかない。その自分の親の介護は全部奥さんがかぶっちゃったから、介護の矢面に立った経験もない……。

Y:日本の会社員の世界って、介護を含めて家庭のことを奥さんに丸投げして、仕事と人事抗争に明け暮れて、それに勝ち抜いた人が上に行く、みたいなところがあるから、経営層は一番響きにくいグループかもしれません……これはひがみっぽいかな。

川内:ああ、そういうこともありそうです。「勝ち抜いた人たち」とのお話し合いの中で、「何で、自分の親の介護が大変だ、という話を他人に言えないんですかね」と伺ったら「いやあ、だって自分もそうやって、人が弱くなったところで足を引っ張ってきたから」と(笑)。要はマイナス要素が伝わったときにそれを使って人事権を行使してきたから、そういうふうにしてきた人間の思考回路の中には、人に介護のことを相談するということが……

Y:「あの人は介護で、まともに働けないんだよ」と、弱みを見せることになって。

川内:ええ。だから、もうそもそも、人に言う発想はないよ、という。

Y:ひえー。

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