Y:前の対談でホスピス医の小澤先生が「介護はプロジェクトマネジメントの発想が必要。ガントチャートなどを用意するべき」と仰っていました(「『自分の絶望を分かってくれる人』がいますか?」)。

 実は、会社で介護関連の窓口になる人は、ちゃんとリテラシーを持っていて、「これはもう不可逆の進行だよ、家族に任せるというのは選択としてはあまりお勧めできないよ、代替案としてはこういうのがあるよ、だいたいこれくらいの期間が、介護体制の構築に取りあえず必要だ」みたいな感じで、おおよそのメドを見せてくれるんじゃないか、なんとなくそう思っていたんですけれど……。

川内:現状ではまだ難しいと思います。基本は制度があっても自己申告で、しかも申告する側にリテラシーがないから、何をしたらいいのかが分からない。

Y:ということは、企業の総務なり人事の人が使うマニュアルがいるんですね。パターン別にチャートを用意して、「あなたはこれを用意しておきなさい、こういう学びをしてくださいと、意識改革もこれぐらいやってちょうだいね。その上でこういう支援策が受けられます」と、全体感と具体策、そして、その企業が用意する「介護戦線シフト」と組み合わせて、仕事と介護のいちばんいい両立のバランスを探る。

企業は介護戦線のロジスティックスを支援せよ

川内:そうです。実際に体験してきて、そこに絶対に乗せねばならないのは、繰り返し言っていますが「家族が介護することが最善ではない」ということ。介護休暇取得は大いに結構ですが、それを、直接自分がおむつ交換をすることに使うとか、毎日一生懸命その認知症の方に寄り添うことに使うことがベスト、とは限らない。ゼロにする必要はないんだけれども、相談にパワーを使うことが大事です。

Y:相談ですか。

川内:そうです。介護保険の使い方、休暇の取り方、だけじゃなくて、仕事をどうするかについて、会社は相談に乗るべきだし、介護者は相談するべきです。そういうことにちゃんと予算を割いてくださる会社さんは安心なんですけれど……介護休暇の制度だけを用意して、お仕事はそこまで、としている人事、総務の方もたくさんいらっしゃるので。

松浦:そうはいっても、介護の相談は話すほうも、聞く方も覚悟が要りますからね。

川内:はい。その通りです。総務や人事の担当の方にしても、人の介護の話に踏み込むということは、その方のパーソナリティーに相当食い込んでいくわけですから、怖いですよね。でも、私がお伝えするのは「専門的なアドバイスができないのは当然ですから気にせずに、とにかく、話を聞いて、こちらにつないでください」です。分からなくてもいいから、とにかく聞く。介護のために会社を辞めたいと言われたら、「いや、もうちょっと考えましょうよ」と引き留める。

 で、私につないでもらったら、そこからその方のお気持ちを、どこが今は一番大変ですか、誰が今は一番気持ちがつらくなっていると思いますか、というところから、少しずつご本人の気持ちもフォローをしていきます。具体的な制度、施策と、介護者のお気持ちのフォロー、両輪が回ってないと介護の体制は始まらない、スタートできないと思うのです。

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