川内:「ここまでやってきたんだから、この先だって大丈夫」と思ってしまう気持ちを、「まだ大丈夫だったんだけど、払ってきた税金を取り戻せるんだったら悪くないよね」みたいな気持ちに替えて、そこからヘルパーさんに来てもらうことに慣れていくと、ご本人の気持ちの負荷がだいぶ変わってくるんですよ。

松浦:ああ。わかります。

川内:という話をすると、「なるほど、じゃあ、早い方がいいんだね」と動いてくださる方もいるんですけど、まだなかなか。松浦さんご自身も、介護保険制度のお話を事前に聞いていたけれど、自分事としては捉えていなかったというお話がありましたよね。

松浦:頭が事態を受け入れないんですよね。

Y:「科学技術ジャーナリストの松浦氏をして、そこが不思議だ」というコメント、感想もたくさんいただいています。

川内:この難しさって、あらためて表現されるといかがでしょう。どうしてそう思っちゃうんでしょうね。

松浦:何でしょうね。結局「家庭のうちのことだ」という意識がものすごく強かった。

川内:なるほど。

松浦:自分のうちのことだから、自分のうちの中で片付けるという意識がすごくあった。だけど、介護はそういうものじゃなかった。「介護は、家族内の問題ではありえない」。そういう認識を最初に持つべきだったんですよね。

社員の介護、企業側の認識は?

川内:そうなんです。もう1つあるとするなら、今ならご理解されていると思うのですけれど、「家族だからこそ難しくなってしまうよね」ということも。

松浦:今だから分かる。そう、そう、そうです(強くうなづく)。

川内:最大の問題はそこですよね。介護は家の中のことだから、家族のことだから、家族がやるというこの感覚、どうしたら柔らかくなっていくと思いますか。

Y:難しい。まだまったく介護などの経験がない方々が。川内さんがやっているのも、会社員を対象にした、そういう認識を柔らかくしていくための活動ですよね。

松浦:もうそれは、社会全体がそうなっていくしかないという気がするんです。とにかく、老いがある段階を過ぎると、もうそれは家庭の問題じゃなく社会問題になるということがみんなの認識にならないと。でも、そういう目で見ていると、意外と政治家でもそういうことが分からない人がいっぱいいますよね。

川内:はい、そうですね。基本が三世代以上の大家族で、みんなで支え合いながら、ということができた時代は確かにあったんだけれども、今は核家族化が進み、そしてなにより医療技術が進んで、介護状態から長く生きることができている、できてしまう。

松浦:政治だけでもないです。これは当然、多くの社員を雇用する企業にとっても大問題だと思うのですが、経営者の認識はどうなんでしょうね。