Y:相談すべきかどうかの判断をくだすのは大変だし、それが何日かかるのかもわからない。

川内:私の企業でのセミナーでは、具体的に「もう、こういう症状が出たら包括に電話をしましょう」というふうに言っているんですね。認知症に限らず、この方は病を得ている、という症状が具体的にどういうことなのか、普通は分からない。我々ならば、例えば、真夏なのにあんなに着ていらっしゃる、もしかしてあの方って、とか、1つのものをたくさん袋に詰めて歩いている方とかを見ると、あ、もしかしてと思うわけなんですけど。

Y:なるほど。

川内:でも、ご家族からしたら、普段の生活の中でさえご病気に気付くというのは難しいし、また日々一緒にいるわけでなければ余計に分からない。そして、「そうじゃないと思いたい」というバイアスもかかる。

 だから、手がかりがなければどうしても相談するタイミングが遅くなっていく。そこをなんとかしましょう、というのが私がやっているセミナーなんです。気づかせるだけでは無責任なので、「気づいて、いろいろな支援を活用することができれば、あなたは仕事を辞めずに済むし、辞めないことの方がむしろ親孝行につながるんですよ」というのをお伝えはするんです。だけど、それでもなかなか、届く人と届かない人がいるし、先ほどのように、親御さんに対して怒りながら個別相談に来られる方もいらっしゃいます。

Y:その個別相談で、初めて気づく方もいる?

「まだちょっと早いかな」は、もう危ない

川内:実はたくさんいらっしゃいます。「うちはまだ、ちょっと早いかなと思っていたんだけど、今日は個別相談の枠が空いているから」と来た方が、真っ青になって帰っていくという。ついこの前も「すぐ認定の申請を出した方がいいですよ」とアドバイスさせていただいて、申請したらいきなりもう要介護1が出た方がいます。

松浦:要支援1、2を飛び越えちゃって。

川内:そうです。そのぐらいご家族のフィルターが、やっぱりあるわけですよね。

 別の方は、玄関で転倒した経験があるお母様がいる、お父様も入院したりしている。でも、老いた2人で何とか支え合っているから、僕はこれでいいと思っているんです、とおっしゃる。「うん?」とこっちは思うわけです。玄関先で転ぶということは家の中でも転ぶケースがあって、家の中で転んでしまうと発見までに当然時間はかかるわけで。

Y:ああ、そうか。

川内:玄関先だったからまだ見えるところで発見されるわけですけど、家の中だと本当に気付いたときには、ということもあり得ます。ましてお父様の入院中にそうなったら。「まだ大丈夫」と思いたい気持ちは分かるけれども、でもそれが後々本当におつらくなっていくし、またお父様、お母様が「自分たちで何とかやれるんだ」ということを抱え込み過ぎると、いざ支援が必要になったときに、他人に手を借りる気持ちの負荷がものすごく強くなる。

松浦:そうですよね。