川内:例えば、松浦さんがお母様の認知症の診断を受けるときに「最初から包括(地域包括支援センター、以下同)に相談をして近くのクリニックを探しておけばよかった、それに気づかなくて、診察を何カ月も待ってしまった」という話がありましたよね。こういうことがあると、「何でもっと早く、包括のことを俺に教えてくれなかったんだ、何で包括はもっと情報発信しないんだ」と、ぎゃんぎゃん攻撃する方が実は大半なんです。特に男性の介護者の方で。
Y:ああ、ありそうです。自分もちょっとそう思います。
川内:ですよね。でも松浦さんはそうではなくて「自分がこうすればよかったのに」と、冷静にとらえていらっしゃる。実は、僕はここがすごいというか、不思議だなと思っていまして。お伺いしてもいいですか。包括支援センターに対して「もっとこうしてくれればいいのに」みたいな思いというのは、そのとき、ありませんでしたか。
松浦:なかったですね。というのは、最初からそういう支援組織があるとは全然頭にないわけです、それを、弟が引っ張ってきてくれた(「兄貴、ぜんぶ自分で抱え込んじゃダメだ!」参照)わけです。引っ張ってきたら、今まで自分が背負わねばならんと思っていたものがそれなりに減るわけですよ。その時点で自分にとってプラスかマイナスかで言ったらすごくプラス、ありがたいわけです。だから感謝こそすれ文句を言うことではない。そういう意識です。
川内:なるほど。メリットはあるんだから、やいやい言う必要はない、と。合理的です。では「今まで親の介護をひとりでやってきた。他人に何が分かる」という気持ちはどこかになかったですか。くどい聞き方ですみませんが。
「あの対応は、優秀なケアマネならではです」
松浦:いや、どう介護したらいいかというのは、全然知らないで始めましたからね。包括支援センターの人たちと話し始めてから分かったのは、「彼らの側にはもうそういうノウハウがある程度蓄積されている。これは自分が学ばねばならない」ということでした。今まで知らなかったが、プロがいる。ならば、プロに話を聞かねば、と思いました。
川内:介護支援をする側からは涙が出そうなお話です。こう考えていただけたのは、松浦さんご本人のキャラクターが当然大きいのですが、お話というか、本を読んでいて、ケアマネジャーのTさんという方が、本当に優秀な方だったこともありそうです。最初からTさんがケアマネだったのですか。
松浦:そうですね。包括支援センターの段階ではセンターの相談員の方だったんですけれども。要介護1が出て、それでケアマネジャーを紹介しますねと当たったのがたまたまTさん。NHKの番組でもうお名前をご紹介したからいいでしょう、田村さんです。
川内:包括から紹介していただいたのが、たまたま田村さんだった。
松浦:そうです。だからこれはもう本当にツイていたとしか言いようがない。
川内:本当ですね。
Y:そんなに?
川内:もちろん、相性がよかったこともあるでしょう。しかし、私も一応ケアマネジャーの資格を持っているので、言う資格が多少はあると思うんですが、ケアマネのみんながみんな、田村さんのような対応ではないはずなんですよね。
Y:なにか本から、例を挙げていただけますか。
川内:ここですね(「果てなき介護に疲れ、ついに母に手をあげた日」)。この回の田村さんの対応です。
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