今回は、現場で介護者を社会福祉士・ソーシャルワーカーとして支援する側の方に登場していただく。NPO法人「となりのかいご」の代表理事、川内潤さんだ。川内さんは会社員が介護を行う難しさを痛感し、電通、テルモ、ブリヂストンなどをはじめとする企業で、支援活動を行っている。

 「会社員による親の介護はどんな難しさがあるのか」。まさに日経ビジネスオンラインの読者の方に、そして担当編集の自分にとっても切実なテーマだ。松浦さんが介護を行ってきた現場であるご自宅に伺って、じっくり対談していただいた。

※3月18日(日)松浦晋也さんがNHKラジオマイあさラジオに出演します。放送時間などはリンク先をご覧ください

(構成:編集Y)

松浦:今日はよろしくお願いします。わたしの好みで、ウーロン茶を置いておきますので、喉が渇いたらお互い勝手に。

川内:はい。今日はご自宅まで押しかけさせていただいてすみません。ここにいると、『母さん、ごめん。』で読ませていただいた状況が目に浮かびます。

松浦:いえいえ、さっそくですが、川内さんの活動は、「介護をする側をいかに支えるか」というところを重視していますよね。それは自分自身がまさにこの家で体験して重々感じたところです。

川内:はい。

川内 潤(かわうち・じゅん)1980年生まれ。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。2014年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。ミッションは「家族を大切に思い一生懸命介護するからこそ虐待してしまうプロセスを断ち切る」こと。誰もが自然に家族の介護に向かうことができる社会の実現を目指し、日々奮闘中。

「家族前提」でできている日本の介護システム

松浦:例えば、みんな、母を心配するわけですよ。心配ですね、回復されるのでしょうか、と。でも、介護の矢面に立っている僕の心配はしてくれない(笑)。しかし僕がひっくり返ったら、母も共倒れになるわけですよね。

川内:おっしゃる通りですね。

松浦:介護をサポートするということは、実は、要介護者以上に、介護する側、矢面に立っている介護者を支えないとどうにもならないなということに、自分の経験で気づいたんです。ところが、まだ世の中はそこまで気づいていない。そんな現状で、川内さんはまさに介護する人を支えるということをやっておられる。どういう経緯からなのですか。

Y:川内さんはちょっと異色の経歴なんですよね。ご両親が介護事業をしていて、でも外資系企業に進まれて、そしてこの業界に。

川内:ええ。一応私、大学の4年間で介護関連の勉強や介護保険制度の研究をしていたんです。“理由なき反抗”がいろいろあって(笑)、ビジネスの道に一度は進むんですけれど。でも、大学で学んだ当時、日本の介護制度は「明らかに要介護者のための制度であり、ご家族が家にいることが前提なんだな」と思ったものです。