「宅配のLCC」が必要になる

米国などでは、個人が隙間時間を使って荷物を運ぶというサービスも登場しています。個人が隙間時間を利用して自分のクルマに他人を乗せて目的地まで送る、ウーバーの宅配版といったサービスです。

松岡:確かに海外ではそうしたサービスも登場していますが、日本でどこまで可能かは分かりませんね。そこまで人件費の安い人があふれているという状況でもないでしょう。

山手:ウーバー的に、人々が隙間時間を利用して荷物を運ぶという仕組みも、結局のところ現在の宅配の延長で、それでは「同時性の解消」につながりません。誰かが、荷物が届くのを待っていなければなりませんから。むしろ、自販機を250万台も普及させた日本には、フランチャイズ方式で宅配ボックスを普及させる潜在的な力があると思います。

アマゾンは、当日配送の一部や、1時間、2時間というスピード配送を実現する「プライム ナウ」向けの配送網を、自前で構築し始めています。実際の配達は物流会社に委託していますが、ヤマトなど既存の宅配ネットワークとは別の仕組みです。1時間で届けるといったスピード配送は、注文した個人も急いでいるために、配達を待っていて確実に受け取ることを前提にしています。そこでは、むしろ崩壊し始めている「同時性」が成立しているとも言えます。

松岡:今後、荷物を受け取るための時間に消費者がどれだけお金を払うかで、サービス内容は分かれていくのだと思います。

 私たちは、時間の価値は大きく2つに分かれると考えています。「節約時間価値」と「創造時間価値」です。前者は、要するにあまり楽しくないから、できれば節約したい時間です。後者は、楽しいからずっと続けていたいと思うような時間です。

 宅配の荷物を待つというのは、基本的には面倒臭い時間ですから、節約時間価値ですよね。つまり、多くの人は短くしたい、もしくはそもそも、待っていたくないと思うわけです。ヤマトの時間指定枠は6月19日から変更になり、午前中、午後2~4時、午後4~6時、午後6~8時、午後7~9時となりました。午後0~2時が廃止され、1時間枠の午後8~9時が2時間枠の午後7~9時に変更になったのですが、2時間も待ちたくないと思うのが、多くの消費者の正直な気持ちではないでしょうか。宅配ボックスのニーズが高まっているのは、そのためです。

 その一方で、今すぐ欲しいというニーズもあります。待ちたくないので、1時間で持ってきてくれれば、その分、お金は払ってもいいという消費者もいるわけです。

山手:プライム ナウの1時間配送は、年会費とは別に1回890円の配送料がかかります。もしかしたら、商品の値段よりも配送料の方が高くなるかもしれない。非常に付加価値の高い、上澄みの部分ですよね。だからこそ、自社の経営資源を投じるだけの価値があると判断しているのだと思います。

松岡:今後、ニーズごとに宅配のネットワークは細分化していくことになると思います。エアラインの世界でも、かつてはフルサービス・キャリアだけでしたが、そこにローコスト・キャリア(LCC)が登場して勢力を急拡大するなど、ニーズごとにサービスが細分化していきました。宅配の世界でも、LCC的なネットワークが今後、不可欠になるでしょうし、ニーズをとらえて急速に台頭する新しいサービスも登場してくるのではないでしょうか。

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