自販機型ビジネスで宅配ボックスは広まる

山手剛人(やまて・たけと)
フロンティア・マネジメント 産業調査部シニア・アナリスト 1999年ウォーバーグ・ディロン・リード証券(現UBS証券)に入社。2003年に同社最年少でシニア・アナリストに就任し、小売セクターの調査を担当。2010年にクレディ・スイス証券に移籍。2017年より現職。

フロンティア・マネジメント 山手剛人シニア・アナリスト(以下、山手):今、宅配総数の約2割が再配達だと言われています。つまり、約8億個ですよね。一方、コンビニ店舗も含め、商業施設や駅に宅配ボックスを設置したとしても、せいぜい、約2億~3億個しか賄えないと試算しました。2億個とすると5%分ですから、足りません。

 そこで、どうするかを考えました。ヒントとして着目したのが、ソフトドリンクの自動販売機です。自販機は今、全国に約250万カ所に設置されています。それと同じ数だけ設置できないとしても、仮に、1カ所あたり10個くらいの宅配ボックスを100万カ所設置できれば、全国で1000万個分、365日で36億5000万個、取り扱うことができます。

ただし、その宅配ボックスを誰が設置するのかという問題もあります。

山手:その通りで、可能性があるとしたら、自販機と同じようなフランチャイズ方式でしょう。遊休地を持っている個人や個人事業主などに対して、企業が宅配ボックスを置くフランチャイズのパッケージを提供するというものです。自販機もコンビニも、パッケージの内容を企業が競いあってオーナーを獲得していったからこそ、非常に多くの自販機や店舗が全国に普及しました。それと同じように、宅配ボックスも企業が設置を競い合い、かつ、設置する個人もメリットを得られるようなビジネスモデルを構築できれば、普及は加速すると思います。

松岡:宅配ボックスの普及に市場原理を導入するというのは、非常に重要な視点だと思います。ヤマトは宅配ボックスをオープン型にして、その宅配ボックスを各社で共有しましょうという戦略を描いているようですが、私は企業が競争し合わないとダメだと思います。企業も個人も、儲けようというアニマルスピリットで競争するからこそ、社会的な課題の解決が進むのだと思います。

 それこそ、アマゾンのような購買プロセスの川上で圧倒的な力を持つ事業者が、設置に乗り出すかもしれません。既に、アマゾンは米国などで独自のロッカーを設置しています。中国では、荷物の受け取りだけではなく、送ることもできるスマート宅配ボックスなるものを各社が設置を競い合い、既に4万カ所以上に普及しています。

こうした宅配ボックスを本気で設置していくと、既存の宅配事業と競合することにもなりかねません。人手不足問題の解消という観点からは必要でしょうが、将来的には従来のような“ファーストクラス”の宅配事業は縮小せざるを得なくなるかもしれません。

松岡:ヤマトをはじめとする宅配事業者は、既存のネットワークが非常に巨大なので、なかなか変更することは難しいかもしれません。既存の宅配ネットワークを縮小するというリスクがあるとすれば、宅配ボックスを本格的に普及させようというインセンティブは、あまり働きにくいですね。