多角化戦略をどう考える?
おっしゃるとおり、ヤマト運輸は2005年にホールディングス制に移行し、グループとしての事業戦略を描いていますね。宅急便事業を核としながらも、法人需要、つまりBtoBの物流や海外事業の展開など、多角化路線を打ち出しています。
都築:すでにアジアなどに進出していますし、海外展開をしたいという気持ちは分かるけれど、慎重に進めるべきだと思っています。僕が言っているのは、まずは国内をしっかり固めることが先ではないかと。
将来にわたって反対というのではありません。報道などによると、佐川急便さんも海外展開に力を入れていると聞いています。一方で、日本郵政さんは海外の物流会社を買収したけれどうまくいかず、巨額の損失を出している。ヤマトには、まず自分の足元をしっかり固めて、十分に準備をしてからでもいいのではないかと。今、ヤマトの足元は決して磐石ではないと思うのです。
実際に、今回も荷物が配りきれず、問題が起きたのです。当日配達だとか海外進出とか、無理をしている面があるようにも見えます。
ヤマトの中に、少子高齢化で、いつかは国内市場の伸びが止まるので、海外へという考えがあるのかもしれません。
都築:今後も市場が伸びていくかどうかは僕も分かりません。でも今ヤマトは5割のシェアを持っていると言われますが、5割ということはまだ5割残っているわけです。極端な言い方をしたら、全部宅急便が扱えば、今の倍になるわけでしょう。まずは国内の体制を万全にしてから、海外に展開してもいいのではないかと思います。もちろん目下の状況では、日本でさらにシェアを増やそうにも、ドライバーの確保からして、大変だと思いますが。
巨大物流施設が稼動して、末端は?
2000億円を投じて、羽田や沖縄などに国内市場はもとよりアジア展開をにらんだ大規模な物流施設を作るなど、設備投資にも力を入れています。
都築:それはいいのですが、どうも大きな設備を作ったから、アマゾンさんのような大量の荷物も扱えるという判断につながったのではないか、と気にはなります。立派な施設ですね。あれだけのものを作ったら、いかに稼働率を上げていくか、ということも考えるでしょう。
ただ、巨大物流施設で機械を使って、たくさんの荷物を受注して仕分けても、最後は全国の営業所に届いてドライバーが運ぶわけです。末端の配送の負担も考える必要がありますね。

宅急便だけに頼る事業構造から変えていきたいという狙いはあると思います。
都築:事業には限界が来ると思うかもしれませんが、面白いもので、需要というのは、いろいろ変化するんです。
宅急便だって、考えて、考えて、もともとなかったサービスを作り出したわけです。今後は、配達の仕方だって、うんと変わっていくかもしれない。また変えていかなくちゃならないと思います。
僕は、アイデアというものは、考えればなんぼでも出てくるんじゃないかと思っています。だから、この先、何年かしたら荷物が減るんじゃないかとか、仕事がなくなっちゃうんじゃないかと、不安になる必要はないと思う。
ある事業やサービスがこれで終わりということは、絶対ないと思います。もうどんどん新しく変わっていくわけです。その変わっていくところを、どうとらえていくかですね。
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