信頼されるから荷物が集まる

お客さんからの「信頼」を保つことができたとお考えですか?

都築:その通りです。だって、信頼できない運送会社に荷物は預けないでしょう?かつて、宅配の市場は郵便小包がほぼ独占していました。国鉄に荷物を託す鉄道小荷物という方法もありましたが、鉄道ですから駅から家までの足がない。一部、運送会社が運んでいましたが、「駅留」と言って、駅まで自分で荷物を取りに行かなくてはならなかったのです。みんなリヤカーで取りに行ったものです。

 一方、郵便局はというと、例えば、荷物を持って行って、この荷物はいつごろ着きますかと聞きますね、すると「着いたときに着きますよ」という答えが返ってくるような状態なんです。宅急便をやる前には、ああ、これは絶対苦情にならない、いい言い方だなと、思いました。でも、お客さんから見ると、いつ着くか分からないでは、困るでしょう。そこでヤマト運輸は、荷物を受けたら全国に翌日配達しようと。そのサービスを実現し、品質を磨いて、信頼を高めてきたんです。

 僕は縁あってヤマト運輸に入社しました。それで小倉昌男さんと一緒に宅急便を始めて、皆さんから、宅急便というのは発明だ、なんて言われてきました。やっぱり自分が働いてきたヤマト運輸という会社、育ててきた宅急便というのはかわいいんです、僕は。だから今、こういうことになって本当に悲しいんです。

今回、ヤマト運輸には大きな問題が起きたわけですが、都築さんがヤマトがここで経営を立て直すために、もう一度輝くために何が必要だとお考えですか?

都築:それは、もう一回、原点に戻れということです。一言でいえば。宅急便を始めたときの発想からずいぶんずれちゃっているよ、ということを言いたい。

 かつて、宅急便を始める前のヤマト運輸は、業績がずっと悪かったんです。それには原因があって、何の特色もない運送会社になっていたからなんです。運転手もあんまり質がいいとは言われなかった。歴史のある運送会社で、一時は成功していたんですが、知らないうちにヤマト運輸は惰性に流されて信頼されない会社になっていたんです。

そこから宅急便をつくり、発展させてきたということですか。

都築:会社というのは作り変えることができるし、人間、考えればアイデアが生まれるものです。ただ、今の経営陣は人柄はいいけれど、品がいいというか、がむしゃらさが足りないようにも見えます。
 僕は小倉さんとさんざん言い合って、議論しました。小倉さんに平気で何でも言うのは僕くらいだったかもしれないけど、言いたいことを言って議論しました。だから、今の経営陣にも、議論して考えて、ヤマト運輸を作り変えていってほしいと思います。小倉さんだって、生きていたら、もっと自分たちで考えてみたらどうだって、きっと言うはずです。

では、会社を作り変えるということについて、さらに都築さんの意見を聞かせてください。

元会長が語る ヤマト運輸、誤算の検証(下)に続く

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