なぜ経営陣は現場に目が向かなかったのか

日経ビジネスの取材に対する経営陣の答は、昨年夏ごろから、ネット通販の荷物が急増し、対応できなくなったというものでした。しかし現場では荷物はもっと前から増えていたという話も聞かれ、対応が遅いという印象は否めません。結果的に巨額の残業代の未払い問題につながりました。

都築:過去、サービス残業がなかったとは、正直言えません。僕の時代にも、ありましたよ。ただ今のように、夜10時まで配達するような状況ではなかったと思います。
 運送業と製造業は違います。製造業なら機械を増やして24時間稼働させればいいのですが、運送業は最後は人間が足を使って届けないと仕事が完了しません。

 もともとアマゾンさんの荷物に関しては、佐川急便さんが配りきれなくなり、ヤマトで引き受けてもらえないか、とアマゾンさんに頼まれたのだと思います。もちろんほかにも小さいところまで含めてネット通販の会社はヤマト運輸のサービスを利用してくれていると思いますが、その結果、一番ひどい立場に追い込まれたのがドライバーということです。

本社は気づいていなかったと思いますか?

都築:見て見ぬ振りをしていたとは思いませんが、対応は遅かったですね。労働組合もそう言うでしょう。実際に、私自身、組合幹部から「経営陣に対し散々言っていたのに、対策が打たれていない」と聞いています。それも、もう3~4年前からの話です。だから今回の問題は急に起きたわけじゃないと思っています。

ヤマトはもっと早い段階で、通販会社などに、もう荷物は引き受けられないと言うべきだったのでしょうか。

都築:ええ、僕はそう思います。なぜなら荷物が多すぎて配れないと、サービスの質の低下につながるからです。また僕が一番、心配しているのが「傭車」の問題です。ヤマトが配りきれない荷物を、社外の運送会社に委託して配達するというものです。もともと盆暮れなど荷物が急増する時期には、傭車を多く使っていましたが、最近は、日常的に傭車が増えている。傭車であっても、ドライバーはヤマトの制服を着ていますから、お客さんからは、一見、分かりづらいのです。このやり方は、ヤマトへの信頼を大きく損ないかねないと思っているんです。

 ヤマトのドライバーは日々お客さんと接する中で信頼を得ていくんですね。そこに他の運送会社とのサービス品質の差が生まれるんです。でもヤマト以外の運送会社に委託していたら、誰が配っても同じということになります。ヤマトは品質が高いから多少値段が高くてもヤマトを選んでいたお客さんが、ヤマト選ぶ理由がなくなってしまいます。そうなると単に価格競争になってしまうこともあります。