聖域なくプライシングを見直し

それでは、荷物を出したいというお客さんに対して、ヤマトさんは今後どういうスタンスで対応しますか。

長尾:お客さんとは、どのお客さんを指していますか。基本的には、個人のお客様や小口のお客様に対して、運べませんというお話を差し上げるのは筋が違うと思っています。

 ただ、当社のネットワークをある程度使いたいという大口のお客さんに対しては、ネットワークを占有するボリュームも併せて契約で握っていく必要があります。それと同時に、荷物を運ぶビジネスですから、ある程度適正なキャパの拡大という努力は継続していく必要があると思います。

 宅急便のネットワークがある程度膨らんで、そこのネットワークの中に大きなボリュームが流れ込んできているのは事実です。こうした状況に対して、適正量にいったん身の丈を縮めさせていただいて、その間に働き方を含め、しっかり再整備をして、その上でもう一度適正なキャパ拡大というものを目指していきたいというのが、基本的な考え方です。

量とともに、運賃についてはどのような方針ですか。

長尾:特に大口のお客様に関して、聖域なくプライシングを変更させていただくような協議を進めていきます。基本運賃の値上げをして個人のお客様だけから取ろうなんていうことは全く考えていません。我々のビジネスの前提条件がかなり変わってきたので、基本運賃に反映をさせていただくというのが、筋ではなかろうかと思っています。

 個人のお客様を含め、丁寧にご説明をして、ある程度ご理解をお願いする形を取らざるを得ないという判断をしました。ただ、基本運賃の上がり幅が、等しく我々が今、お付き合いをしているお客様に全て反映される訳ではありません。大きな割引率を設定しているお客様に対しては、少しビジネスに合った形のプライシングに見直すご提案、ご相談もしていかないとなりません。

経営の在り方を大きく変えると受け止めてもよいのでしょうか。

長尾:少なくとも我々が、個人間で荷物を運ぶ、いわゆるCtoCから宅急便を始めた頃は小口のお客さんが中心でしたので、ある程度(物量の)幅は読めました。毎年の実績を見ながら、クリスマスや母の日など、荷物が増える行事には備えていきました。

 ただ、ネット通販が独自に展開するセールによって、例えば大量のミネラルウオーターを運ばなければならないようなことまで想定して、我々が体制を整えておく必要があるのでしょうか。そのようなモノの売り方、買い方というものが、果たして本当に経済にとってプラスなのでしょうか。そうした売り方も含めてネット通販と一緒になって、もう一度ビジネスを再設計をしていかないといけない時期にあると思います。

ネット通販が実施するセールなどのイベントについて、需要の予測データをヤマトと共有するなどして運ぶ体制をどうするかといった議論は、これまであまりやっていなかったのでしょうか。

長尾:ある一定の情報は当然聞きますし、そうしたイベントによってできる(物量の)山に対しては、我々も備えてはきました。しかし、一時的な山に対して、徐々に応えられなくなるような労働需給の状況になってきているのです。

 ですので、社会的なロスをどうなくすかという見地に立って考える必要があります。そして、全ての荷物が宅急便のネットワークの中に流れ込んでいくという思想は、変えなければいけません。

それは、宅急便ではない、新たなネット通販専用のネットワークを作るということでしょうか。

長尾:そういうことも志向していかないといけないと思っています。例えば宅配ロッカーについて、当社がなぜ他社も相乗りできるオープン型の宅配ロッカーを展開しているかと言うと、そうしないと社会的なロスが出るからなんですよ。例えば、イギリスではアマゾンのロッカーもあれば、ロイヤルメール(日本における日本郵便に相当)のロッカーも町中にあふれています。しかし、本当は1つの場所に1つのロッカーがあって、我々の荷物も日本郵便さんや佐川急便さんの荷物も受け取れるようになれば、消費者にとって使い勝手が良いですよね。

今のところ、他社はどんな反応ですか。

長尾:今は佐川さんが相乗りしていますが、日本郵便さんは違う動きをしています。だから、日本郵便さんはクローズドの仕組みになっています。今、数を増やしていますが、私はあれはもったいないと思っているんです。だから基本的にはすべてオープンにして宅配ロッカーを増やし、1つのインフラとしてまとめるべきだと考えています。

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