前期は制度変更の負担が約70億円だった

新しい従業員を採用していくためには、やはり賃金を上げる必要があります。そのためには原資となる利益が必要です。2013年にアマゾンとは割引率や量に関して、どういう考えに基づいて契約を結んだのでしょうか。

長尾:個社のお話はしにくいです。

それでは大口顧客との運賃の在り方はどのように考えていますか。

長尾:大口のお客様との運賃の在り方をこの文脈でお話をすると、アマゾンさんの運賃をどう考えていますかという話の答えになってしますので、それに答えるのは適切ではないと思っています。少なくとも言えることは、我々が従来やっていたビジネスの環境を比べると、前提が大きく変わってきているのは間違いありません。

 我々のような労働集約型のサービス業を取り巻いている経営環境は大きく変化しています。先ほど申し上げたような労働需給の話だけではなくて、社会制度も大きく変更しています。社会保障に対する企業負担は増えてきているし、外形標準課税の増税の問題もあります。これは一過性の話かもしれませんが、マイナス金利の問題などで、退職給付費用の積み増しなども生じているわけです。

 ヤマト運輸の2017年3月期でそういう制度変更による負担増が、ざっくり約70億円ぐらいあるんですよ。これは当社の営業利益の5分の1から6分の1にも相当する大きな額です。

ヤマトの立場からすると外部環境の変化はいかんともし難い部分があることは分かります。それでも、経営として、もっとできることはなかったのでしょうか。アマゾンとの取引でいえば、かなり割引をして契約をしたと言われています。

長尾:いや、契約をしたというのは認識の違いで、その前からやっていたわけです。我々はゼロだったわけじゃありませんからね。ある程度、佐川さんと当社はシェアしていたんですよ。そこは事実誤認のないようにお願いします。

 ただ、あんまりこれ以上言うと個別の話になってしまうので、そういうことをお書きになりたいのでしたら、もうこれ以上答えませんけど。

物量が限界に達するという認識は、当時はなかった

それでは、アマゾンについてではなく、大口顧客一般についてお聞きします。例えば荷物が増えれば、大型物流施設の稼働率を高めるなどのメリットがあると思います。その一方で、荷物が増えると現場の負担が大きくなります。こうした大口顧客を獲得することのメリットとデメリットを踏まえて、どのような方針で運賃設定などをしていたのですか。

長尾:そういう意味では、全体物量の設計をどうやっていくかという中で、個社個社の伸び率について、あれだけ伸びることを想定していなかったというのはまず間違いないです。これはアマゾンさん個別の話ではなく、少なくともネット通販セクター全体についてです。

 ネット通販のクライアントはたくさんいるんですよ。アマゾンさんだけじゃなくてね。そこに対して、各社の伸びがどれくらいになるかという予測に基づいて、それぞれの取引で契約上、ボリュームの制約までしていたかどうかという話になるわけです。

 正直言って、その当時の認識としては、ボリュームの制約をして契約をするという考えはありませんでした。ボリュームの想定をしながら運賃を決めたり、オペレーションの中身を決めたりということはあります。けれども、この時期はこのボリュームまでが限界ですよという設定をする必要があるかというと、そういう認識がなかったのは事実です。それは、今の状況を見ているからいくらでも言えるのですけれど。

いつ頃からボリュームが制約になりそうだと感じていましたか。

長尾:ボリュームについては、当然ながら常に意識しながらやってきました。ただ、今はそれだけではなく、契約上の制限をかけるという思考をしているわけです。現時点では、そのようなことまで含めて大口のお客さんとは握らないといけないという認識を持っています。

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