昨年末から意思決定の準備をしてきた

そうした現場の状況が経営陣の耳に入ってきて、どのような対応をしようという議論になったのでしょうか。

長尾:当然ながら、労働力をいかに確保するかということは議論の対象ですが、それは一過性な話です。そういう意味では、例えば荷物の量や運賃単価の問題をテーマにしてきました。具体的には、労働需給の変化を反映したプライシングにしなけれればならないということは、どこかのタイミングで適切に考えなければならないテーマだと思っていました。そして、そのタイミングでは、人が集められない中でさらに荷物が増える状況を、いったん止めにかからないといけないという議論にはなりますよね。

ヤマト運輸が2月に働き方改革室を立ち上げて、改革案を発表したのが4月でした。そうした抜本的な改革をすることを決めたのはいつ頃ですか。

長尾:本当の意味で抜本的な改革までやろうという意思決定をしたのは、働き方改革室を立ち上げた2月の前です。昨年末の繁忙期を過ごしながら、意思決定の準備をしていました。

昨年夏から年末ぐらいまでは、今の体制でやっていけると考えていたのでしょうか。

長尾:いや、いけるとは思ってないですよ。夏あたりから何がどう変化してきているのかというあたりの分析もしなければいけませんから、少しそこの実態把握の時間も必要でした。

 現場の窮状が一過性のものなのか。それとも、パートタイムの人たちの働き方が変化して、しばらく改善の兆しがないのか。そういうことの実態を把握するためには、それぞれの地域からもヒアリングをしなければいけません。

長尾社長が本当にこれは抜本的に変えなければいけないなと決めたのは、年末ぐらいですか。

長尾:そうですね。やっぱり一番のとどめは昨年12月の一番最後の週あたりです。通常は、法人から出てくる荷物が全体の9割で、個人間の荷物が1割という状況なのですが、法人から出てくる荷物の割合がぐっと増えて、宅急便のネットワークに流れ込んでくるようなことが、12月の終盤にありました。そういう意味では、ある程度、法人の荷物をコントロールしていく仕組みを明確に作らないといけないという議論になりました。

 9割の法人の荷物のうち、ざっくり言うとその半分が宅急便センターでお取り扱いしている小口のお客さんの荷物なんです。そうした小口のお客様にいろいろな制限をかけるという話では、基本的にはないと思っています。12月のような繁忙月であっても、基本的には個人のお客様を含め小口のお客様に対しては、ちゃんと門戸を広く構えるのが誠意だと思っています。

 ただ、大口のお客様との取引については、これまでの業界慣習では割引率が高いのですが、こうしたプライシングの在り方がこれからの時代も正しいのかどうかという問題があります。大口のお客様との契約では、いろいろなことを想定しながら、ボリュームも含めて握らせていただくようなこともしなければなりません。

 そのあたりも含めて考えると、大きな改革をやる時期だと判断しました。もちろん人の力が必要な業態ですから、働き方改革を経営の中心に据えて、これからの時代に合わせた新たな働き手が入ってきてくれる会社に、もう一度作っていくことが重要だと考えています。今いる社員の働き方を変えることが、そこにつながっていくと思っています。

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