昨夏以降、急にパートが採れなくなった

長尾:ただ、大きな契機になったのは、昨年の夏頃から労働需給の悪化が急速に深刻になってきたことです。よく報道ではドライバー不足という言い方をされますが、我々のような物流事業というのは、ドライバーさえ集まればいいというわけではありません。

 20数年前は、セールスドライバーが全部やっていました。私が入社した頃は、朝出てきて、みんなで仕分けして積み込んで、さあ行ってくるわとやって、そこから帰ってきてみんなで荷下ろしして、掃除してというような、そういう世界だったんですね。

 しかし、最近は働き方を変えなければならないという話をずっとしてきて、いろいろな意味でオペレーションを分業化してきています。

 今、当社の人員構成を見ても、16万人の社員のうち9万人がパートタイムの社員なんですね。残る7万人がフルタイムの社員で、そのうちの約6万人がセールスドライバーです。9万人弱のパートタイム社員の大半が、宅急便センターやターミナルでの作業や、集荷・配達をしています。

 よって、パートタイムが集まりにくくなるということは、当社のオペレーションにとって打撃が大きい。昨年の夏ぐらいから急速にパートタイムの集まりが悪くなってきた1つの大きな原因は、社会保険の適用範囲拡大です。私はそのこと自体については何も反対しないし、あるべき姿だと思っていますが、想定以上に社会保険の適用を嫌がる人が多かったのです。

 週20時間を超えると、社会保険が適用になります。週20時間前後働くパートタイムの社員は、絶対数としては非常に多かったわけです。どちらかというと社会保険が適用されないよう、労働時間を減らす選択をした方たちが、非常に多かった。

 ということは、これまで例えば1日4時間、週5日で週20時間働いていた方々が、それより短い働き方にシフトしなければいけなくなった。例えば週4日勤務に減らそうという話になるんですよね。それだけでも、相当大きな戦力減少になりました。そして、減少した分を新たな採用で補えるかというと、なかなかそうもいかなかった。

効率の良いチーム集配がやりづらくなった

東京都内のチーム集配の様子。1台のトラックに対して、数人のパートタイマーが集まり、地域の荷物を一気に運んでいく
東京都内のチーム集配の様子。1台のトラックに対して、数人のパートタイマーが集まり、地域の荷物を一気に運んでいく

長尾:我々が都市部の集配で展開をしている「チーム集配」(編集部注:宅配ドライバーが司令塔になり、パートタイマーとチームを組んで宅配する)という仕組みは、非常に効率がいいんですよ。しかし、(パートが集まりにくくなったことで)これがなかなかやりづらくなってきてしまった。

 いわゆる車持ち込みで、宅配の仕事をやってくれるようなフリーランスの方々は一定層いらっしゃるため、こうした方々の力を今はかなりお借りしています。ただ、我々は集配だけではなくて、実はその前後作業などにパートタイムの方々の労働力に頼っていました。そのため、例えば朝の仕分け作業で1人欠け、2人欠けて、1割、2割、戦力が実質的に目減りをすると、これは非常に大きな問題なんですね。

 パートタイムの方々がいなくなると、セールスドライバーが早く来て作業に参加しなければなりません。作業が遅延をしてセールスドライバーが出庫する時間が遅れてしまうと、結局、集配時間が縮まったり、最終的に夜遅くまで配達したりという話になってしまいます。

 物量の増加だけではなくて、我々がオペレーションをやっていく中で、一番の基礎的な労働力が縮小してしまったことが、ダブルパンチになっているんです。

次ページ 昨年末から意思決定の準備をしてきた