4月28日、ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸は宅配事業の構造改革を発表。「宅急便の総量の抑制」「時間帯指定の見直し」「働き方改革」など様々な改革を打ち出した。

 日経ビジネスは同社の長尾裕社長に一連の経営判断について疑問をぶつけた。宅配現場の窮状をいつ頃から、どのように把握していたのか。構造改革で宅急便は具体的にどのように変わるのか。長尾社長のインタビューを2回に渡って掲載する。

(日経ビジネス5月29日号では「特集・ヤマトの誤算 本当に人手不足のせいなのか」を掲載しています。日経ビジネスDigitalの読者であれば、PCやスマホで全文をお読みいただきます。)

長尾裕(ながお・ゆたか)氏
1988年ヤマト運輸入社。2009年、TSS営業推進室長。2010年、執行役員兼関東支社長。2013年、常務執行役員。2015年にヤマト運輸の社長に就任し、2017年6月からヤマトホールディングスの取締役を兼務する予定

4月28日に記者会見を開き、働き方改革や宅配システム改革について発表しました。現場の労働負荷が深刻化していますが、長尾社長はいつ頃から現場の状況を認識したのでしょうか。

長尾裕・ヤマト運輸社長(以下、長尾):少なくとも、ネット通販の成長が非常に大きいというのはご承知の通りです。もうそのこと自体は、数年前からある程度見えていたわけですよね。

 前後説明をするために(アマゾンジャパンとの取引について)言っておくと、よく佐川急便さんが捨てたものを拾ったみたいな言い方をされますけど、そんなつもりはさらさらありません。私に言わせれば、一番無責任なことをやったのは佐川さんじゃないのという気がしてしょうがないんです。そもそもアマゾンさんの荷物は、日本通運さんがやっていました。日通さんがやっていたのを、全部安い値段でひっくり返したは佐川さんです。

 それを(佐川が)全部ほったらかして、(ヤマトがやらなければ)誰が運ぶのですか。(アマゾン側から)何とか助けてくれないかというお願いがあって、力になろうという判断をしたわけです。

2013年のことですね。

長尾:当時、私はまだ社長ではありませんでしたが、そういう経営判断をしたという話です。

 ただ、少なくとも言えることは、ネット通販全体の伸びが非常に大きいということです。普通に考えると年率の伸びは少しずつ鈍化してくるはずなのですが、ネット通販の世界においては全くそうではなくて、毎年同じような伸び率をずっと継続しているというのが、恐ろしいところです。

アマゾンが日本に進出した2000年頃からということですか。

長尾:そうですね。当初は取扱商品が本やCDなど、いわゆるソフト系が中心でしたが、どんどん品目が増えていって、まさに世界最大の品ぞろえと言えるような状況になりました。しかし、彼ら(アマゾン)だけの話ではないですよね。楽天さんに象徴されるような日本的なネット通販も、それに輪を掛けて拡大してきました。リアルの小売りが苦境に陥るほど、世の中の消費行動が変化してきています。

 日本の宅配便がネット通販の受け皿として最適解かというと、何とも言えません。それでも、たぶん一番近い、一番フィットしそうなところにある。だから、当社の宅急便や、佐川さんや日本郵便さんの宅配便ネットワークしか、ネット通販の受け皿になれなかった。

 パイがどんどん広がっているのに伸び率が高いということは、それだけ毎年増えている絶対的な荷物の個数は非常に大きいわけですよね。

毎年、宅急便の取扱個数が1億個以上伸びています。

長尾:実際に我々の宅急便のネットワークに流れ込んでくる荷物の多さを非常に実感したのは間違いありません。

 当然ながら、こうした状況をどう緩和していくか、これまでも議論してきました。不在の問題や、いろいろなオペレーション面を原因とする収益構造の悪化を問題視してきました。これらの問題に対して構造改革に着手すべしということは、当然ながら社内でも議論してきました。