ヤマト運輸が急増するネット通販と宅配現場の窮状を受け、宅配システムの改革や宅配ドライバーの働き方改革を検討している。同社はまだ最終決定していないため、様々なアイデアが出ている段階だ。その中で何を優先すべきなのか。物流会社を経営する一方、コンサルティングも行うイー・ロジットの角井亮一・代表取締役に聞いた。

角井亮一(かくい・りょういち)氏
1968年大阪生まれ、奈良育ち。上智大学経済学部経済学科で3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学からマーケティング専攻でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社し、小売業へのコンサルティングを行い、1996年にはネット通販参入セミナーを開催。その後、光輝物流に入社し、物流コンサルティングを実施。2000年2月、株式会社イー・ロジット設立、代表取締役に就任。年間1億3700万個を出荷するグループ「宅配研究会」代表幹事。宅配事業者と協力し、安定供給・安定価格を目指すために、真剣に議論する研究会。「アマゾンと物流大戦争」(NHK出版)、「物流がわかる」(日経文庫)、「2時間でわかるオムニチャネル入門」(あさ出版)など20冊を発行 (写真=尾関裕士)

ヤマト運輸が運賃値上げの方針を打ち出しています。

角井:今報道されているのは、私が2014年に提案した内容に似ています。3年前に「ベースロード料金を上げましょう。値段を5年くらいかけて上げ、顧客ごとに損得が無い方がいいですよ」と提案しました。

 その時、ヤマト運輸さんは顧客ごとに一気に1.5倍や1.7倍という値上げ幅を打ち出し、みなさん辟易としていました。それまでヤマト運輸さんのシンパだった人が、怒って離れる姿を見てきました。こうしたことは社長3代くらい尾を引きます。なので、とても心配して上記のような提案をしました。

 今年もヤマト運輸さんに、「今は燃料が安いのですが、これから上がっていく可能性があります。燃料サーチャージを入れるなら今です」と話しています。この仕組みならすべての顧客の運賃が一律に上がりますから。

 個別に交渉すると、「ヨソの会社には値上げしないのに、何でウチを上げるのか」という不満が出てしまいます。隣の芝は青く見えてしまうからです。

 また、働き方改革があり、今後人件費が上がる可能性があります。その上がった分をサーチャージすることも、行政を含め、あらゆる関係者に提案しています。業界全体で運賃を上げるには独占禁止法の問題をクリアにする必要がありますが、個別なら出来ます。

 こうした制度を導入すれば、宅配以外の物流事業者も助かります。

佐川急便や日本郵便は値上げすると思いますか。

角井:値上げしないと思います。

そうすると、ヤマト運輸はシェアを落としますね。

角井:そうなりますね。ただ、私は値上げより再配達を減らすことの方が優先度は高いと考えています。

 再配達がなくなれば、20%の仕事を削減できます。20%の人材を採用するのはたいへんです。ヤマト運輸さんの再配達は、1枚の不在票につき3回運ぶ場合もあり、宅配ドライバーさんの体感値では、仕事の3割から3割5分がこれだそうです。