宅配の時間帯指定の変更は諸刃の剣

 だが、ネット通販の取り扱い個数の増加で、宅配に追われるようになり、顧客とのコミュニケーションや営業に割く時間が減ってしまった。荷物を届けると、忙しそうに去っていくヤマトの社員と接する読者は多いはずだ。

 顧客とのコミュニケーションがなければ、「宅配マシーン」との実感はより高まってしまうだろう。

 決められた時間の範囲内で大量の荷物を届けなければならないため、「昼ご飯を食べる時間がない」との声もある。しっかり食事をとる時間がないと、気持ちが沈んでいってしまう。

 ヤマトは労働負荷を下げる方策として宅配の時間帯指定の見直しを検討している。

 荷物が集中する午後8~9時の指定時間を拡大する案や、昼ご飯を食べる時間を確保するために昼の時間指定を廃止する案などを議論している。

 だが、時間帯指定の見直しは副作用も大きいとの見方がある。ある証券アナリストは「指定時間が長いと、家での待機時間が長くなる。待ちきれずに外出する人が増えて、不在のリスクが高まる」と指摘する。

 また、「平日は20時までに帰宅するビジネスパーソンが多く、20時以降の時間指定の取り消しは影響が大きい」とも。

 時間指定の設定の仕方は一長一短があり、まだ明快な解は見出せていないようだ。

時間指定で荷物が届くシステムを確立している
時間指定で荷物が届くシステムを確立している

 有効な手立てと見られているのが、再配達の有料化だ。

 現状では、何度も配達してもらっても宅配料金は変わらない。そのため、指定時間に不在にしたり、化粧をしていないなどの理由から居留守を使ったりして、再配達になってしまうケースが多い。

 再配達の割合は、一般的に20%と言われる。国土交通省によると2015年度の宅配便の取り扱い個数が37億4493万個であるから、およそ7億5000万個が再配達されている可能性があり、膨大なコストがかかっている。

 海外では再配達が有料のケースが一般的であるうえに、日本でも有料化を受け入れるような声は多い。有料のシステム設計の手間があるものの、有料化によって不在率は下げられるのではないだろうか。

 荷物の引き取り先として、宅配ロッカーやコンビニエンスストアの活用は、引き続き強化すべきだ。様々な課題はあるものの、利用者は増えている。

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