また、サッカーやアメリカンフットボールといったほかのスポーツのユニフォーム事情も調査しましたが、そこでカギとなったのが、エンターテイメント性でした。特にショービジネス化が進んでいる米国のスポーツでは、ユニフォームも試合を魅力的に見せる要素の1つだと考えられています。そこで改めてグラウンド上で選手の動きを魅力的に見せるユニフォームとはどうあるべきかを検証してみました。

体に直接ペイントするようなデザイン

 まずはデザインのスタッフたちとラグビーの試合動画を見て、選手の動きをひたすら観察しました。すると、ラグビーではスクラムを組んだ際の肩や腕、ボールを抱えて走る際の脇周りなど、側面が最も魅力的に映るということが分かったのです。基本的に前傾姿勢で走るので、バスケットボールやサッカーのユニフォームとはまた違う見せ方が必要ですが、その点を意識したデザインには、まだ誰も取り組んでいないことも分かりました。

ラグビーの試合の映像や画像を調べると、他の競技に比べて肩や脇が強調されることが分かった
ラグビーの試合の映像や画像を調べると、他の競技に比べて肩や脇が強調されることが分かった
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 もちろん、グラウンド上で選手を強そうに見せることも重要です。ここでは人間の筋肉の流れや配置や身体のラインを研究。そこから鎧や甲冑のデザインを発想し、特に肩の部分を強調することで相手に対して威圧感を与えるようなデザインにならないかを検討しました。

筋肉の構造や流れを調べ、どこにボーダー柄を当てれば体が大きく、強そうに見えるかを研究した
筋肉の構造や流れを調べ、どこにボーダー柄を当てれば体が大きく、強そうに見えるかを研究した
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 こうしたリサーチから、これまでのように均一にえんじと黒のボーダーを配置する2次元的なデザインではなく、選手の身体に沿ってボーダー柄をはめ込むという、まるで体に直接ペイントするような3次元のデザインができないか、試みたのです。

 上記のようにリサーチしたデザインをもとに、さらなる仕掛けを加えています。その1つが、早大らしさを伝える「W」のモチーフを組み入れる試みです。そのヒントとなったのが、山下監督が語ったこれからのチーム戦術でした。「これから目指すのは、『鎖』のように切れないディフェンスを持つチーム。1人の相手に対して常に2人で立ち向かうようなイメージ」という言葉から、選手同士が肩を組むと脇のV字が組み合わさってWの字を形成するデザインを加えています。

リサーチと並行して実施したデザインのプロセス。選手が肩を汲んだり並んだりすると「W」の文字が浮き上がるデザインのアイデアは、ボツ案から浮かんだ
リサーチと並行して実施したデザインのプロセス。選手が肩を汲んだり並んだりすると「W」の文字が浮き上がるデザインのアイデアは、ボツ案から浮かんだ
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