ソフトだけでなくハードでも抜かりなし

 人事業界には「インターンシップでは学生にエース社員を会わせる」という鉄則がある。まさにこれを実践した形だが、忙しい幹部社員や店長の時間をしっかり確保するところに、ファーストリテイリングの本気度がうかがえた。実際、参加した大学生の一人は「正直アパレルは就職先としてイメージしていなかったが、ユニクロの海外事業を率いる人たちはこんなに優秀な人ばかりなのかと驚いた」と述べるなど、学生の心を引き付けることに成功していたようだ。

 優秀な社員との面会をソフトとするならば、ファーストリテイリングはハード面でも抜かりがなかった。往復の航空券代やホテル代はもちろん、滞在中の食事代すべてや地下鉄・タクシーなどの細かい交通費までもすべてファーストリテイリングが負担していた。参加した学生は、「航空会社はANAで羽田便と快適だった」、「いつも夕食は豪華なレストランに連れていってもらって驚いた」と感想を述べる。もちろんおいしい食事でいい印象を持ってもらうとともに、食事の際には先ほどの幹部社員や店長が参加して、学生とのコミュニケーションを図っていた。

「ブラック企業」の“汚名”を返上

 海外インターンの実施費用は数千万円規模とみられる。73人からどれだけ採用につなげられるか未知数であることを考えれば少なくない額だ。そこまでかけてグローバル人材の採用につなげたい背景には、ファーストリテイリングの抱える固有の事情がある。

 その一つが、海外店舗の拡大である。同社の店舗数は2015年11月に海外店舗数が国内の店舗数を上回った。2001年に海外1号店をロンドンに出店し、14年で国内を超える規模まで成長した。意欲的な海外出店の一方で、その運営を担う人材の不足が目立ってきている。「棚に欠品なくジーンズなどの商品を積み上げたり、さりげなく接客したりするなど、ユニクロ流を新たに進出する海外店舗で指導実践できる人材は日本で育成するしかないのが現状」(中西一統人事部長)。

今回の海外インターンシップを企画した中西一統人事部長
今回の海外インターンシップを企画した中西一統人事部長

 同社はオーストラリアや韓国など海外でも人材を育成しているが、まだ他国へ人材を輩出するほどには至っていないという。今後の海外進出の成否の一つはグローバル人材をいかに確保し育成できるかかかっているということだろう。

 「ブラック企業」と呼ばれることもある“汚名”を返上し、より優秀な人材が集まる会社にしたい。これも海外インターンシップに高額の費用をかける理由のはずだ。今回は2400人もの応募があり、海外人材を求めていることを学生にアピールするには十分な効果があった。さらにインターンシップに参加した学生はブログやSNS(交流サイト)、課外活動などで積極的な人材が多く、入社につながらなくても後輩に「ユニクロのインターンはためになった」と口コミしてもらえるといった効果も狙える。

 今回のインターンシップはグローバル人材を積極的に求める取り組みとして評価はできる。あとはどれだけ人材を採用に結び付けられるかにかかっている。海外インターンに参加した後も、参加都市別にチームを組んで改善案などを競い合う仕組みを導入するなど、継続的にインターン参加学生を引き付ける工夫をしている。

 ファーストリテイリングの新たな取り組みの結果がどうなるか、各社の内定が出そろう6月中旬ごろに明らかになる。