
金融業界は大きく銀行、証券、保険の3業態に分かれる。経済活動に不可欠なお金の流れを水面下で押さえ、融資先の企業の浮沈など、社会的に影響力の大きい仕事だ。ES(エントリーシート)や数度の面接を経て、内定に至る基本的な流れは前回の商社と同じ。ただし1000人前後も大量採用するために、面談やキャリアセミナーという名称で解禁前の早い段階から事実上の選考を行う企業が多いことが特徴だ。
近年は総合金融グループの旗印を掲げ、傘下に複数の業態を抱える企業もあるが、基本的な違いは知っておいた方がいい。銀行は集めた預金を、設備投資や住宅購入でお金が必要な企業や個人に貸し出すのが重要な役割。もちろん、借り手がきちんと返済できるのかといった目利きが重要で、「いろいろな業種の企業に接する中で人間的な視野や幅が広がるのが醍醐味」と、みずほフィナンシャルグループ・グループ人事部の河野篤哉氏は語る。
証券会社は株式売買など資本市場での取引を担う。資金が必要な顧客企業に株式を新たに発行させ、値上がり益や配当益を期待する個人らに買ってもらう業務が腕の見せどころだ。農耕型の銀行に対し、証券は狩猟型に例えられることも多い。販売ノルマはあるが、やればやっただけ報われる面もあり、平均年収が1000万円を超えるのは魅力だ。「自分が銀行向きか、証券向きか、まず見極めて」との指摘は多い。
エントリー数を答えない企業が多かったが、メガバンクで数万人規模とみられる。倍率だけで難易度を論じることはできないが、内定者数から逆算すると倍率は20倍前後。有名大の内定者が大半を占め、激戦なのは間違いない。
「金融は目に見える形のない商品を扱うのが仕事。顧客と向き合う上で誠実さは大事」(大和証券人事部の磯恵子氏)。各社が求める人物像でも誠実さを挙げる傾向が強く、信用を重んじる業界であることは肝に銘じるべきだ。銀行からも遅刻は厳禁などの指摘が相次いだ。遅刻や欠席時は、事前連絡など基本動作の徹底は欠かせない。
第一生命保険に印象に残った内定者の話を聞いてみると、次のような事例だった。友人など自分の周辺で生命保険を受給したことのある人を見つけ、大切な人が亡くなって苦労したことや保険金が支払われて役立った感想などをヒアリング。そこから自分なりに感じたことを面接で述べたという。「実際に話を聞く行動力や他者に寄り添う姿勢などが伝わってきた」と人事部の中溝哲聡氏は評価する。
保険に限らず、金融は資産運用の相談などで顧客の声にじっくり耳を傾けたり、チームで営業活動を行ったりする機会も多い。面接でも「一方的に覚えてきたことをしゃべるだけでなく、自分の言葉で対話しようとする姿勢を見ている」と三井住友銀行人事部の中村浩一郎氏は語る。
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