20代のうちに海外生活を経験させる商社が多い(写真:アフロ)
20代のうちに海外生活を経験させる商社が多い(写真:アフロ)

 総合商社は就職人気ランキングで常に上位に入る。若くして海外で活躍できる環境があることや、平均年収が1300万円を超えるなど収入面も魅力だ。ただしES(エントリーシート)の応募が7000前後に対し、採用数は各社とも140人前後と狭き門になっている。

 商社の業務内容は「トレーディング」と「事業投資」に大別される。前者は鉄鉱石や銅などを輸入して日本企業に販売したり、日本企業が製造した商品を海外で販売したりして利益を得る。後者は主に海外の企業に資本と人材を投入して収益改善を図り、株価向上や株主配当などで利益を得るものだ。

 「資源を輸入販売していた商社が、安定的に資源を確保するために、それを持つ企業を買収した経緯もあり、2つがつながっている」(丸紅人事部採用課長の野村容氏)。

 1次選考はESとテストで、その後は面接を計3回ほど実施して内定という流れになる。高学歴の内定者が多いため、大学名で門前払いする「学歴フィルター」の存在がささやかれるが、各社はこれを否定する。ただ、各社ともテストがかなりの難関。一般的にテストは2割程度の人を落とすために使うが、総合商社ではその倍近くが落ちる。学力の低い就活生はここで落ちるため、学歴で選別する必要がないわけだ。

 内定者に共通する素養を各社に聞いた。三菱商事は信、力、知を掲げる。具体的には、切り開く人、高めの目標にストイックに取り組める人、海外育ちや国籍が違うなど異なる経験を持つ人が多いという。

 「予備校もない地方出身で受験に苦労した。そこで地元で受験勉強を教えるNPOを立ち上げた学生がおり、切り開く素質を感じた」(三菱商事人事部 採用チームリーダーの下村大介氏)

 伊藤忠商事は「各社員がひとりの商人であることを目標として掲げており、誠実で楽観的な人が多い」(伊藤忠商事採用・人材マネジメント室長の甲斐元和氏)。

 今年の採用では警察庁など国防関係に興味があり、その結果が出るまで選考が進むのを待ってほしいと申し出た就活生がいた。甲斐氏は「隠そうともせず正直に話してくれたことと、そのぼくとつとした物言いに誠実さを感じた」として了承し、その後伊藤忠の内定者になった。

 住友商事人事部採用チーム長の藤和恒氏は「創造、発信、協働を求める人材像に挙げている。どれも欠かせないが特に協働を重視しており、俺が俺がというよりチームでうまく動けるかを考える人が多い」と説明する。

 丸紅は逃げずに立ち向かう人が多いと答える。京都大学農学部出身で畜産部に所属する社員がオーストラリアの牧場に派遣されたが、病気などで牛の育成がうまくいかず悩んだことがあった。「周りの社員もすぐには解決策を提示できなかったが、その社員は諦めず、最後は大学時代の恩師のツテをたどって解決に導いたことがあった」(野村氏)。

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