メガバンクの元行員で採用支援会社「ツイング」を起業した志禮(しれい)直也氏は、「業績などの数字を分析する際は、過去からの推移という時系列、そして同業他社との比較、この2つの視点を覚えておいてほしい」と強調する。時系列で追うことで、その数字が企業の実力なのか、何らかの特殊要因によるものなのかが判断しやすくなる。

 通常、業種によって平均的な営業利益率は異なる。例えば、製造業の方が流通業よりも高い数字になる。業種の差異を無視して利益率を比べてみても、ほとんど意味がない。同業他社と比較することで、その会社の相対的な強さ、弱さが見えてくる。

 「事業等のリスク」も有報などで確認できる。ソフトバンクグループの場合、リスク説明の欄で為替変動などに加え、経営陣という項目もある。「当社グループ代表である孫正義に不測の事態が発生した場合、当社グループの事業展開に支障が生じる可能性があります」と明記してある。その企業にとって、何がリスク要因になっているかが分かる。

ハローワークも就活に使える

 就職先の選択肢は上場企業だけではない。規模は小さくても、特定の分野で高い競争力、シェアを誇る中堅・中小企業は少なくない。

 明治大学ではユニークな中堅・中小企業の社長を招いた説明会を定期的に実施している。「いい会社はたくさんあるのに採用に苦労している」と同大就職キャリア支援事務室の滝晋敏(あきとし)氏は狙いを語る。実際、参加した埼玉県のサーパス工業で内定者が出た。同社は液晶の関連部品で国内シェアが8割と圧倒的な強さを持つが、採用情報の発信には限界があった。

 企業の発掘にハローワークも有用だ。ハローワークでは「若者応援宣言事業」と称し、新卒を含む若年層の採用や育成に積極的な中小企業などをピックアップしている。過去3年間に内定取り消しをしていないなど、一定の基準を満たした企業だ。東京新卒応援ハローワークの清田祐次氏は「マッチングの場として、ぜひ来てみてほしい」と呼び掛ける。

 就職活動では実際に社員に会って話をすることも大事だが、それだけだと印象論に終始する恐れもある。今回紹介したデータやランキングなどを組み合わせることで、より等身大の企業の姿が見えてくるはずだ。

《本記事は、日経ビジネス2016年2月29日号スペシャルリポートを再構成しました》

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