日本経済新聞社がまとめる総合企業ランキング「NICES(ナイセス)」も利用価値が高いと言える。同調査では従業員の視点から、有給休暇の消化率や育児介護支援、人材育成・定着率などを評価した2015年度版ランキングがある。

「働きやすさ」で選ぶなら
●NICES(ナイセス)2015年度版の「従業員」項目ランキング
1 NTTドコモ
2 ソニー
3 日産自動車
4 NTT
5 三菱商事
6 住友化学
7 武田薬品工業
8 日立製作所
9 セブン&アイ・ホールディングス
9 リコー
9 SCSK
12 TOTO
12 コマツ
14 味の素
15 三越伊勢丹ホールディングス
16 花王
16 マツダ
16 損保ジャパン日本興亜ホールディングス
19 富士フィルムホールディングス
19 資生堂
注:NICESは日本経済新聞社が日経リサーチと共同開発した上場企業の総合ランキング。「従業員」項目はワークライフバランスや多様な人材活用などについて評価している

 ランキングには定年後の継続雇用や柔軟な育児休業・短時間勤務制度、在宅勤務のしやすさなど、働きやすい職場作りに熱心な企業が名前を連ねている。トップのNTTドコモでは性別や年齢、国籍の異なる多様な人材を活用する「ダイバーシティー」推進に注力している。

 女性の活用や働きやすさは、最近では多くの企業がアピールするようになった。だが、建前だけなのか、本当にやる気があるのか。各種資料に目を通し、見抜く目を養いたい。

財務のプロはここを読む

 就職を検討している会社なら、企業としての稼ぐ力や安定性は気になるところだ。「知名度が高いから安心」といった選び方では将来に禍根を残しかねない。その点、どの会社の株に投資すべきか、どの会社になら融資してもよいか、そんな分析をするプロの意見は参考になる。

財務のプロの視点は就職活動にも使える
●決算短信や有価証券報告書でチェックする点
営業キャッシュフローを安定的に稼いでいるか 本業の事業環境が安定しているか、成長しているか。その中で競争力があるのかが分かる
自己資本比率が低すぎないか 1桁台は危険水域と言える。想定外の収益悪化にどの程度耐えられるのかを示す
売上高は伸びているか 製品やサービスが社会に必要とされているかの尺度。安売りで消耗戦に陥っていないか
(営業)利益率 一般的に営業利益を売上高で割った数値。同業との比較でビジネスモデルの強さを検証
1人当たり収益率 売上総利益を従業員数で割った数値。生産性が高い半面、負担も重い可能性あり
労働分配率 売上総利益に占める人件費の割合。従業員の働きぶりを重視しているかを示す
事業等のリスク カリスマ創業者の死去など、不測の事態が起きた場合のリスクを確認
注:専門家や市場関係者らの意見を基に本誌作成

 世界最高の投資家として名高いウォーレン・バフェット氏。同氏はかつて、望ましい投資先についてこう言及している。「私が求めるのは安定した産業の中で長期にわたり競争優位性を保持している企業」。かみ砕いて解釈すれば、営業キャッシュフローを安定して稼いでいるかに着目せよ、ということだ。

 営業キャッシュフローとは、本業のビジネスで現金収入がどれだけあるのかを示す数字だ。企業が公表する決算短信に「営業活動によるキャッシュフロー」として記載されている。この数字が着実に伸びているか、マイナスに陥っていないか、などに着目すれば企業の収益力は把握できる。

 同じ決算短信の中で、自己資本比率や売上高などもチェックしたい。自己資本比率は急激な景気悪化や想定外の損失が発生した際に、どの程度、その会社が耐えられるのかの目安になる。一般に10%を割り込むと、経営の安全性が低く危険水域とされる。不正会計発覚で巨額赤字を計上している東芝では、2015年12月末の自己資本比率が8.8%に下がった。

 「コストカットばかりに走って利益を捻出していないか、売上高が増えているかも着目点」と話すのは楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリスト。売上高はその企業が提供する製品やサービスが社会にとって必要とされているかどうかの尺度とされ、重視する市場関係者は多い。

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