就活にまつわる噂のウソ・ホントを徹底検証
「インターンシップは有利?」「学歴フィルターはある?」
史上最も短い決戦となった就活2017。就活生にとってこれから始まる説明会や面接は初めてのことばかり。それだけに情報収集が重要になるが、噂に戸惑うことも少なくない。そこで就活にまつわる噂を徹底調査した。「説明会で質問すると優遇される」ってホント?
2017年卒向けの就活は短期決戦。噂に惑わされずに、志望企業を見極めたい(写真:TK/アフロ)
就活生が企業に初めて触れ合う機会が1~2月などに実施されるインターンシップだ。本来の目的は就業体験だが、選考過程で有利になるとの噂は絶えない。
これはホントだ。「インターンシップを受けた就活生はエントリーシート(ES)を必ず通過させるようにしている」(広告代理店)、「内定者の3割ほどがインターンシップ経験者」(大手金融)など程度の差はあるが、選考の一部と位置づける企業が多い。2017年卒採用は説明会から選考までの期間が短いため、企業はいい人材が集められるか不安を感じている。2016年卒以上にインターンシップでの選考色が強まる。
説明会で質問すると優遇?
3月に入ると企業説明会が始まる。そんな説明会でささやかれる通説が「説明会に参加しないと選考で不利になる」というものだ。これはウソ。企業の採用担当者に聞くと「説明会に参加していなくても内定をもらった学生もいる」(商社)、「席の関係で説明会に参加できない学生も多いので、動画で説明会を実施するようにしている。当然参加者を優遇することはない」(交通)と、あっさり否定する企業が多かった。
ただ、メガバンクから内定をもらった4年生は「面接で『キミは説明会に3回しか参加していないね』と言われた。回数まで把握しているとは驚いた」と話す。ほかにも大手金融系企業で参加回数に言及されたケースは多い。
企業の採用活動を請け負う採用支援会社の担当者によると、「回数で自社への関心が高いかどうかを測っている。関心が高い就活生にはリクルーターを優先して付ける金融機関もある」という。アイデムの調査によると、就活生は平均で23回も説明会に参加する。通常は必要ないが、金融業界を志望している場合には同一企業の説明会に数回通ってみる価値はありそうだ。
説明会で質問をすると目立って有利になるという噂もあるが、これもウソ。
「手を挙げて質問する積極性は評価する。ただ、質問しただけでその後の選考で有利になることはない」(金融)
例外もあり、鋭い質問をした場合は「自然に顔を覚えてしまう」というケースはある。ある交通会社で「車両のやりくりについて説明した際に、減価償却の面での課題を指摘した学生がいた。あえて言わなかったが、実際は指摘の通りだった」。その就活生はESを出さなかったが、「出してくれていればESは通過させるつもりだった」。
一方で注意したいのは、評論家的な質問だ。「ビジネスモデルが古いなど厳しい論評をした後に、今後はどうするのかと質問する学生がいた。現実を知らない学生に指摘されても…」(百貨店)など、反感を持つケースが多い。
説明会の終わりに採用担当者のところにやってきて質問する学生もいるが、質問内容に注意したい。「銀行と証券の違いって何ですかと、終わってから質問する学生がいた。それは今しがた説明したばかりだった。聞いていないのか、質問して目立ってやろうというのか、いずれも印象が悪い」(証券)。
説明会は大勢の就活生がいるので、採用担当者は就活生の態度は見ていないと言われるが、これもウソだ。逆にしっかりと見ている。
「眠そうにしていた就活生が説明会後に『すごい参考になりました!』と満面の笑みで話したのでゾッとした」(商社)。「当社の説明会では参加証を印刷して持ってきてもらい、IDを確認するのだが、スマホの画面を見せる学生が少なくない。小さくてIDが読めなかった…」(商社)など、いずれもダメな学生としてチェックされている。
やっぱり学歴は「見ている」
ESを出す際に気になる噂が、大学名でふるいにかける「学歴フィルター」の存在だ。「ここ十数年、特定の自動車メーカーの内定者が出たことがない」(私立大キャリアセンター)といった声もある。印象の悪さから各企業とも否定するが、これはホントだ。
ある採用担当者がささやく。「どんな大学にも優秀な人がいるのは分かっているが、確率論で言えば上位大学に優秀な人が多い。時間に限りがある中で選抜する必要もあり、学歴フィルターを使う」。この企業ではMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)以上の大学を採用対象にしている。HR総研によると、大企業の56%が「ターゲット校」を設定しているとの調査結果もある。
学歴は変えられないからどうするか。HR総研の松岡仁・主任研究員は「定期的に先輩が採用されているか、学内説明会に来ているかを見れば自分の大学がフィルターをかけられているかどうかの目安になる。残念ながら対象外だった場合、門前払いの可能性も踏まえて挑むことが大切」とアドバイスする。
面接前など実施されるテストについても様々な風評がある。例えば「テストで大半が落とされる」とささやかれるが、これはウソだ。テストの実施を請け負う採用代行会社や各社の採用担当者はどこも下位の2割を落とすと話す。
「基本的な英語や、掛け算割り算など基本計算ができない就活生を落とすのに使う」。ただ、人気企業の場合は就活生の学力も高いため、自然と選別のラインは高くなる。
最近ではウェブテストを替え玉で受ける就活生もいる。数学が苦手な文系学生が理系学生と一緒にテストに挑むといったものだ。事実上野放しの状態が続いていたが、企業側も対策を講じ、選考途中に筆記テストを設けるケースが増えている。「ウェブテストで数学80点、筆記で30点など大きな乖離がある場合は落とす」(広告代理店)。不正は絶対にバレる。
服装が自由という会社も
面接ではスーツが基本だが、地味な色や柄にしなければならないという噂はウソだ。「スーツやネクタイの色、スカートかパンツかも気にしない」という企業が大半。相手を不快にさせる服装でなければ気にすることはない。もちろん例外もある。ある化粧品メーカーでは「自由、私服がオススメ」と書いてあるが、その場合はセンスも含めて評価したいと考えている。
面接で話す内容は「目覚ましい実績が必要」と思われている。もっともらしい話だが採用担当者に聞くと、これもウソだ。「すごい答えは期待していない。自分の経験を自分の言葉で語れればいい」(金融)など、人柄が分かる内容を採用担当者は求めている。
採用に詳しい人材研究所の曽和利光社長は、「就活生は実績を話そうとしてかえって分かりにくいエピソードを選びがち」と指摘する。例えばアルバイトで新人教育を頑張った話などは抽象度が高い。それよりも客からのクレームに、自分がどう考えて対応したのかを話した方が分かりやすい。
《本記事は、日経ビジネス2015年12月14日号スペシャルリポートを再構成しました》
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