熊本駅では滝をシンボルに

 JR九州は今後も駅ビルを進化させていく。2021年春に熊本駅、2022年度には九州新幹線が開通する長崎駅でも、計画が進む。

 熊本駅では、培ってきたノウハウをふんだんに取り入れる考えだ。広い立体駐車場を確保し、ホテルやシネコン、イベントスペース、そして結婚式ができる宴会場も設置。「熊本は『森の都』と呼ばれているので、それを意識したランドマークにしたい。阿蘇の伏流水をモチーフにした滝が流れるビルを計画している」と本郷専務取締役は話す。

 ただ、九州内ではこうした駅ビルや商業施設を作れる駅は限られ、現実的には県庁所在地ぐらいだ。在来線の駅は、首都圏などと比べて乗降客が圧倒的に少ないので、エキナカを開発しようとしても思うような収益が見込めない。

 そこで今後重要になるのが、鉄道沿線外への進出だ。不動産事業は30年の蓄積があり、ディベロッパーとして九州内では名高いが、不動産も含めた総合的な街づくりの開発は経験がなかった。そんな中で、福岡市内にある九州大学の跡地で、市営の地下鉄六本松駅前の開発案件を受注し、2017年春、プラネタリウム付きの科学館や大学院、分譲マンション、有料老人ホームが開業する。商業施設部分には、周辺住民も利用できる「ガーデンラウンジ」を設ける予定だ。

 続く案件として、福岡市内の旧大名小学校の跡地の開発に、JR九州は名乗りを上げている。

 一見すると、急速に拡大を進めているようだが、青柳俊彦社長は冷静だ。「うちの不動産事業は最近、メディアに“イケイケ”で書かれることが多いが、案件の検討はかなり慎重に進めている方だと思う。30年の間、減損を出したり、失敗を繰り返したりしながらここまできた」と語る。

JR九州の青柳俊彦社長は「30年間、失敗を積み重ねてきた。それが街づくりを進めていく上での基本になっている」と語る。(写真:諸石信)
JR九州の青柳俊彦社長は「30年間、失敗を積み重ねてきた。それが街づくりを進めていく上での基本になっている」と語る。(写真:諸石信)

 不動産開発では、JR西日本もエリア外への進出に意欲を示しており、大手ディベロッパーとの競争環境は激しさを増しそうだ。今後も地域と対話しながら街づくりのあり方を追求して、新しいチャレンジをし続けられるかが、次の30年の成長を左右するだろう。

■変更履歴
3ページ本文中
本郷譲専務取締役総合企画本部長とあったのは
本郷譲専務取締役事業開発本部長
の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
本文は既に修正済みです。 [2017/3/15 12:00]