昨年10月、九州旅客鉄道(JR九州)は、本州のJR三社から遅れること約20年で上場を果たした。

 同社の鉄道事業は、豪華寝台列車「ななつ星in九州」をはじめとするユニークな列車で特色を打ち出し、非鉄道事業ではマンション開発やホテル、外食、ドラッグストアなどで稼ぐ力を蓄えてきた。非鉄道事業は、2015年度で連結売上高の6割以上を占めており、その比率はJR貨物を除くJRグループの中で最も高かった。

 そんなJR九州は、駅周辺の街づくりという観点でも、独自の進化を続けてきた。核となるのは駅ビルだが、単なる商業施設にしないように試行錯誤してきたのだ。ただでさえ駅ビルはその立地の優位性から集客しやすく、周辺の商店街の顧客を奪うなどして、独り勝ちになりがちだ。

 2015年に開業した大分駅の「JRおおいたシティ」は、その中にあるテナントを見ると、首都圏の駅ビルと比べても目新しさはあまり感じない。「ユニクロ」「H&M(へネス・アンド・マウリッツ)」「ビームス」といった若者に人気のアパレルブランドをはじめ、「東急ハンズ」「無印良品」など、200以上のテナントが入居する。

 だが、ただ買い物のためだけの施設ではない。貸し農園のある屋上庭園や公衆浴場、駅前広場も作り、アミューズメントパークのように楽しめるようになっているのだ。その目的は、多くの人が「集う」場をつくることにある。

JRおおいたシティの屋上庭園。約1000本の木が植えられた4500平方メートルの敷地には、子どもが乗れるミニトレインがある(左)。また、貸し農園もあり、その横には、家族などで団らんできるようなテーブルとベンチがある(右)。(写真:山本巌)
屋上には鉄道神社や仲見世もある。幅広い世代が楽しめるようになっている。(写真:山本巌)

 この駅ビルは、周辺の商店街との“回遊”も意識している。特徴は、駅前の巨大な広場。以前は大半をロータリーに占められ、人の行き来の少ないスペースだった。それを、駅ビルの改築に伴い、屋根付きのイベントスペースを新設。さらに、広い歩行スペースも設けた。このスペースは、1kmほど離れた繁華街への歩道につながっている。駅ビルで時間を過ごした人たちが、繁華街へ“周遊”することを狙ったものだ。また、駅ビルの駐車場は約2000台が収容できるスペースを確保しており、商店街で買い物した料金との合計額で、駐車料金が無料になるサービスも行っている。

 年2回のセールの時期は、駅ビルと商店街で日にちを合わせるようにして、地域全体で盛り上がれるように工夫している。

駅前には巨大な広場があり、商店街へと続く歩行スペースがある(写真:山本巌)