田中角栄元首相のブームはどのように見ていますか。

葛西:あれはおかしいですよね。出版されたのは昭和40年代で私は課長補佐くらいでした。あれがリアルに見えた時期もあったけど、今はそんな時代ではありません。

 人口も伸び止まっているし、GDP(国内総生産)はある程度は安定しているけど、当時のようには伸びていません。全国で高速鉄道を作っても、流れを変えられることはあり得ません。むしろ別のことを考えた方がいい。

 新幹線が出来ましたが、東北の状況はそんなに変わっていません。北陸新幹線が開通しても、今のところ北陸はそれほど変わっていません。

 人間がどこに住んでどのような活動をするかは、高速鉄道によって変わるのではなくてたくさんの変数の結果としてある訳です。それを1つの切り口で全部を語ろうとするのは、為にする議論としか思いません。

 ただ、東京は大きくなり過ぎました。次の拠点を設けられるとしたら東京~大阪間しかない。甲府盆地や伊那盆地、木曽、奈良などが視野に入ります。

トランプ政権はリニア輸出に追い風だ

米国で高速鉄道プロジェクトを支援しています。トランプ政権の誕生は追い風でしょうか。

葛西:追い風です。そもそも交通インフラをなんとかしないといけないという問題意識は、大統領選の最中から両候補が言っていました。

 それに対する1つの有効な解として、北東回廊では超電導リニア、テキサス回廊では新幹線システムがあります。

 米国では空港と道路が発達していますが、それらが混んでしまって機能が落ちてしまっているところにバイパスを作るのはたいへん意味があります。

 全米至るところに高速鉄道のネットワークを作ることは現実的ではなく、むしろ大都市が並ぶ特定の区間で必要です。例えば北米回廊のワシントン、ボルティモア、フィラデルフィア、ニューヨークです。

 超電導リニアはその途中に停まれる優位性があります。飛行機は離れた都市間を直結する優位性があります。東京~鹿児島は飛行機では2時間ほどですよね。新幹線ではその時間で行けません。

 高速鉄道は途中で乗り降りすることで、離れた大都市間の回廊を地域としてインテグレートする効果があります。それが強みです。これはダラス~ヒューストンでも有効だと思います。

米ダラス周辺にある駅の予定地。ダラスとヒューストンを結ぶ高速鉄道を計画している