アトレの石司次男社長。JR東日本では副社長・鉄道事業本部長などを務めた。(写真:桑原 克典)

 国鉄の分割民営化で、JR7社体制に移行してから4月で30年を迎える。日本国内では鉄道事業の大きな伸びが見込めない中、いかに多様な事業で稼ぐかが各社の課題だ。なかでも駅の不動産を活用した、商業施設は不可欠ともいえる多角化事業だ。JR東日本は、駅ビルの「ルミネ」「アトレ」などを積極的に手掛けJRグループ内でも「成功事例」とされてきた。ただ最近は、業績が伸び悩み、JR東日本グループ流通事業の幹部からは「立地に甘えがあった」との声も漏れる。幹部3人のインタビューでは、足りない部分を率直に反省しながらも、物販以外のテナントの導入強化や、海外も含む駅以外での事業展開など、積極策にも言及した。

 「立地の良さは絶対的なアドバンテージだが、立地を生かすだけではこれからは生きていけない。プラスアルファの部分を付けていく必要がある」。JR東日本の子会社で、多数の駅で商業施設「アトレ」などを運営するアトレの石司次男社長は危機感を募らせる。

既存店売上高は減少

 アトレの2017年3月期の既存店ベースの売上高は、前の期から2%弱減る見通しだ。衣料の販売が不振だった。昨年4月オープンの「アトレ恵比寿西館」など新規開業の効果で、全店売上高は同4%増の見通し。既存店の伸び悩みを新規店舗のオープンで補った。

 この構図はJR東日本のグループ全体にも当てはまる。昨年11月、静岡県の熱海駅に駅ビルの「ラスカ熱海」が開業。同じ月に千葉駅はリニューアルし、改札内に「ペリエ千葉エキナカ」がオープンした。だがこれまで主要駅で開発が進んでおり、同社の鉄道エリア内で、さらに再開発する余地は乏しくなりつつある。

 鳴り物入りで新規開業した施設も、必ずしも計画通りの売り上げを出せているわけではない。昨年3月、東京・新宿駅前に開業した大型商業施設「ニュウマン」。30~40代の女性にターゲットを絞り、飲食・サービスなど、衣料品の物販以外の消費者ニーズへの対応も狙ったが、初年度200億円の売り上げ計画は達成できない見通しだ。同施設を運営する、ルミネの新井良亮社長は「(商業施設がひしめく)新宿で顧客に受け入れられるのは容易ではない。売り場を作り込んで、顧客の支持を得ていく」と話す。