救急車を要請した事案の多くが軽症患者だとして昨年、国の財政制度等審議会が救急車の一部有料化を検討するよう財務相に提言したことが話題になった。地域医療の第一線で日夜救急患者を受けている医師たちは、救急車の有料化についてどう思っているのだろうか。Webアンケートで聞いてみた。

 「軽症」をどう線引きし誰が判断するかは今後の課題だが、アンケートでは次の3つの選択肢を用意し、自身の考えに近いものを1つだけ選んでもらった。

(1)救急車を要請した事案全てに料金を請求すべき
(2)搬入後に軽症と診断された場合は料金を請求すべき
(3)救急車は有料化すべきではない

図1 救急車の有料化について、どう思いますか?
図1 救急車の有料化について、どう思いますか?
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図2 救急車の利用1回当たりの患者負担額はいくらが妥当と思いますか?
図2 救急車の利用1回当たりの患者負担額はいくらが妥当と思いますか?
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 回答した3879人の医師のうち、47.6%の医師が「救急車を要請した事案全てを有料化すべき」と答え、「搬入後に軽症と診断された場合は料金を請求すべき」とした39.0%を合わせると、約9割の医師が救急車の有料化を支持している実態が明らかになった。(図1)。

 また次の設問では、救急車の有料化を支持している医師に対し、救急車の利用1回当たりの患者負担額はいくらが妥当か尋ねたところ、1万円以内とする回答が大半を占め、中でも5000~1万円の負担が妥当とする意見が最も多かった(図2)。

●救急車の有料化に賛成

・不適切な利用は有料化以外には解決しないと考えます。(40代勤務医、呼吸器外科)

・安易にタクシー代わりに利用するケースが多い。(50代勤務医、代謝・内分泌内科)

・かぜ程度の病気であるのにタクシー代わりに救急車を頻繁に利用する患者がいるから。(60代勤務医、整形外科)

・以前からだが、簡単に救急車を呼び過ぎ。ひどい患者になると待つ時間がイヤで呼ぶケースも。有料にしないと改善しないでしょう。(40代勤務医、その他の診療科)

・タクシーと同程度の費用は請求してもいいのではないか(保険外で実費で)。1日に数回、毎日救急車でくるような患者も実在する。(50代勤務医、小児科)

・診察や治療を受けたら料金を支払うわけで、救急車にも料金が発生しても問題ない。(30代勤務医、麻酔科)

・救急車の不正利用があまりにも多いと現場で感じる。せめて100円でも請求すれば、不正利用を減らせるのではないか。(30代勤務医、精神科)

・1000円以下の負担ではタクシー料金よりも安くなるのでダメ。ほんとに生命のかかわるものであれば3000円でも安く感じるはず。「有料化すべきでない」という人の気が知れない。 (50代開業医、整形外科)

・実際に東京ルール病院で救急車を受け入れていたが、明らかに搬送不要な案件でも運ばれてきた以上診察義務が発生する。特に夜間は医療スタッフの数は限られており、本当に重症な患者の診療の妨げになっていた。どのようなときに救急車を呼べばいいか、繰り返し言っても理解できない患者がいる以上、このような現状に対処するには有料化は避けられないと思う。(20代勤務医、その他の診療科)

・必要なら有料でも利用するはず。(30代勤務医、神経内科)

・素人判断は困難なのかもしれないが、無料だからと安易に救急要請されている事例が多過ぎ、勤務医疲弊の一要因になっている。救急医療も含めて、なにかあると医療に責任を負わされるのであれば、しっかり体制づくりをして医療が大変な思いをしている分は、適性な対価を要求すべき。今のボランティア精神にたよる救急医療は先進国でまれにみる貧弱な体制で、善意だけに頼るのは医療崩壊の原因となりうる。(50代勤務医、消化器内科)