2011年から増加が続く梅毒は、今年に入ってその流行が加速している。国立感染症研究所のまとめによると、1月から3月までに883人の患者報告があり、昨年同期間の440人から倍増した。感染研は先天梅毒の増加も懸念されるとし、「注目すべき感染症」(感染症週報、12週)に取り上げるなど注意喚起を行っている。

 感染症法で5類(全数報告)に指定されている梅毒は、2011年以降、患者の増加が続いている。15年は2698人(16年3月30日時点、暫定値)となり、この10年間の最多記録を更新した。

 流行の勢いは16年に入ってからも衰えず、1月に288人、2月に254人と推移。3月(~4月3日)には341人と月単位ではこの10年で最多を記録した(図1)。1~3月で883人と既に昨年実績の4割近くに上っており、流行拡大への懸念が広がっている。

図1 月ごとに見た梅毒患者の報告数の推移
図1 月ごとに見た梅毒患者の報告数の推移

男女とも異性間性的接触例が多く

 感染研は感染症週報(12週)の中で、注目の感染症として梅毒を取り上げ注意喚起を行っている。

 それによると、15年第1週から53週(14年12月29日~16年1月3日)に報告された患者数は2698人(16年3月30日時点、暫定値)だった。地域的には、東京都(1057人)が抜きん出ており、大阪府(324人)、神奈川県(165人)、愛知県(122人)、埼玉県(103人)などで多くなっている。

 性別は男性1934人、女性764人だった。感染経路別に見ると、男性の場合、異性間性的接触が840人、同性間性的接触が585人だった。女性の場合は、異性間性的接触は555人と多数だった。いずれも異性間性的接触が多いのが特徴の1つだ。

 病型は、最も感染力の高い早期顕症梅毒が目立っており、男性1336人、女性422人だった。

 年齢分布は、男性の場合、20~54歳が計1640人で、男性報告全体の85%を占めた。最も割合が高いのは40~44歳(313人、男性報告の16%)だった。一方の女性は、15~34歳が女性報告全体に占める割合が7割(538人)を占めていた。20~24歳が240人と多く、女性報告全体の31%に上った。

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