また、女性医師の仕事量を0.8としたことについて意見を求められた日本女医会会長の山本紘子氏は、「女性医師の実態としては、仕事量は(0.8よりも)もう少し少ないのではないかと感じている。子どもを持つと、どうしても女性医師の仕事量は下がってしまう」と話す一方で、「現状を継続するのではなく、女性医師の負担をいかに減らすかというところから考えて変えていかなければならない」と強調した。

 聖路加国際病院(東京都中央区)院長の福井次矢氏は、「我々が医療の現場で医師不足を感じるのは、偏在の影響が大きい。だから、現場の感覚で全体の医師需給状況を見ると違和感を抱くことになる。全体の需給だけでなく、偏在の問題を同時に解決していかなければ、この推計は生きない」と話した。

医師派遣は大学が担うのか

 一方、地域・診療科の医師偏在については、前回までに現状と課題、そしてその要因を整理した。今回は、課題を踏まえた論点の整理と検討が行われた。

 今村氏は地域偏在の要因の1つとして挙げられている「人口規模の小さい地域では患者数が確保できず、十分な医業収入が得られない」という点に触れ、「診療所の承継は優遇税制がないこともネックになっている。ぜひ税制面の優遇についても検討してほしい」と訴えた。また、診療科偏在の論点の1つとして挙げられている「多額の紹介料を要する、いわゆるフリーランス医師や人材紹介業者などへの対応」について、「フリーランス医師は何人程度いるのかというところから把握できていないことが大きな問題となっている。こうした医師も、厚労省がある程度実態を把握できる仕組み作りが必要だ」と意見を述べた。また、特定の診療科の開業が多いなど、「地域における診療機能(診療科、診療形態・施設など)の需要を大きく超えるような診療機能への就業・開設について、一定の制限が必要ではないか」という論点については「地域の中で、『この診療科は十分あるのでこれ以上は必要ない』といったことを決めていく仕組みが必要だろう」と話した。

 福井氏は、「新専門医制度は、偏在の是正という観点からも千載一遇のチャンスだと考えている。各領域で、望ましい専門医数を明示するといった方向に動かしていただきたい」と期待を語った。

 なお、偏在の要因として挙げられている「大学医局や地域医療支援センター、へき地医療支援機構を含む医師派遣機能の低下」について福井氏は、「大学病院は研究と教育も重要な機能。日本から発表される論文数が減っている中で、大学病院が医師派遣機能まで担うことは負担が大きくなっている。地域の中で派遣機能を検討してほしい」と要望した。ただしこの発言には岩手医科大学学長の小川彰氏が「地方では大学病院以外に地域医療のサポートをできるところがない。そうした地域では、大学病院が医師派遣機能を担うのが妥当なのではないか」とコメントした。

 一方、全国医学部長病院長会議会長の荒川哲男氏は、医師派遣機能に関する課題を解決策として考えられている「医師のキャリア形成と就業支援を一体的に行う仕組み」の具体案として、2015年12月に日本医師会と共同提言した「卒後の医師の異動を生涯にわたり把握する医師キャリア支援センター(仮称)の各大学医学部への設置」を再度強調した。

この記事は日経メディカルに2016年3月31日に掲載された記事を一部改編したものです。内容は掲載時点での情報です。
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