2017年度の予算編成では、低所得者にはしっかりと配慮をしつつ、高額療養費制度で負担能力に応じた負担をしていただいたり、後期高齢者医療制度の保険料の軽減特例を段階的に見直すことなどを、社会保障審議会での議論の上、政府・与党で決めました。医療費については効率的な使い方をすることが大事なので、今後は健康づくりや予防、重症化予防、医療のICT化などに重点を置いて、より良い医療を実現しながら皆保険制度を守っていくことが必要だと考えています。

オプジーボの問題で薬価制度の抜本改革へ

年末には、毎年の薬価調査実施を盛り込んだ「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」も公表されました。従来にない、かなり思い切った施策という印象を受けましたが。

 これはオプジーボ(一般名ニボルマブ)に代表される、革新的だが高額な薬剤への対応のために取った措置です。オプジーボの100mg当たりの薬価は、日本が約73万円であるのに対し、米国が約30万円、英国は約14万円にすぎません(2016年10月時点)。いくら適応拡大があったからといっても予想外の売り上げ増になったわけで、国民が余分な負担を強いられていないかという観点から見直しを図ることにしました。

 今回の薬価制度改革の原則は、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進を両立させることと、国民負担の軽減と医療の質の向上を同時に実現することです。毎年1回の薬価調査をやることが目的でなく、国民がしなくてもよい負担をしているならば、それを是正することにより医療費の効率化を図ろうということです。

 オプジーボの登場自体はうれしいニュースです。癌を治す可能性がある薬が日本から出てきたわけですから。そういった薬がどんどん出てくるようにしながらも、海外価格との乖離幅が大きい薬については、年に1回はちゃんと見て適正な価格にしていくことが新制度の狙いです。詳細については中央社会保険医療協議会や関係団体の意見も聞きながら、今後1年を掛けて詰めていく方針です。

2018年度の同時改定が地域包括ケアを左右

2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定は、消費税率の引き上げが見送られたことから、財源の確保を不安視する声が強いようですが。

 次期改定は、地域包括ケアシステムの構築に向けた重要な改定と位置付けられます。具体的には、医療や介護が必要な状態になっても、住み慣れた地域でできるだけ生活を維持していただけるようにすることが重要です。改定財源については、物価、賃金の動向、医療機関などの収支状況、医療・介護の課題などを勘案して、予算編成過程において検討するものですが、必要な財源を確保できるようしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 
インタビューを終えて

 医療行政をウオッチして30年近くになりますが、これまで専門医制度や医師の働き方について、厚労大臣が直接関わったのを見た記憶がありません。これら本誌読者の関心が高いテーマにコミットする大臣にはぜひ話を聞いておかねば──と、予算編成作業で多忙な中、無理を言ってインタビューをお願いしました。

 30分という短い時間ではありましたが、話を伺って強く感じたのは、医師の働き方を変えなくては、という強い意志でした。塩崎氏の思い入れが、現場の医師の働き方にどう反映されるのか。引き続きウオッチしていきたいと思います。(倉沢)

この記事は日経メディカルに2017年1月5日に掲載された記事を一部改編して転載したものです。内容は掲載時点での情報です。
まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。