一方の供給面では、コメディカルスタッフへのタスクシフティング(業務の一部委譲)や、AIやICTの活用によって医師の生産性が上がり、現状の人数は要らないという話になるかもしれません。さらに今、政府として働き方改革を進めていますので、女性医師の働き方を含め、医師の働き方そのものを希望を持てるものに変えていくことが重要です。

 そうした需要と供給の考え方を、医療だけでなく看護、介護も含めて、先ほどのビジョン検討会で調べてもらっているところです。

地方の声聞き新専門医制度のスタート延期を要請

そのビジョン検討会については、議論を中断させられる形になった「医療従事者の需給に関する検討会」の関係者などから、議論の進め方が「異例かつ非礼」などと批判されていますが。

 そういうご心配をいただいていることは認識していますが、やはり患者の立場から、そして医師の働き方の観点から、そこに対する骨太の基本哲学をもって医師の需給を予測しなければいけないと考えています。ここは1回、医師の方々も患者も住民も将来展望を持てる、新たなビジョンを固めるべきではないでしょうか。

 そのためこの12月には、10万人の医師を対象に、勤務実態と働き方の意向に関する調査も行うことにしました。10年に一度のような大きな話をするのですから、きちんとしたデータを基に、医学部の定員問題も検討しようと私は言ってきたわけです。

性急な議論に待ったを掛ける大臣のスタンスは、2016年6月に新専門医制度を巡る議論に対した時と共通するように感じました。あの時、2017年4月のスタートが決まっていた制度に延期を求めた理由を改めて伺えますか。

 新しい専門医制度については私自身、過疎地を含めいろいろな地方を歩いて、地域の医師会の方々や行政の話を聞いてきました。そこでは「県に1つしかない大学病院に医師がみんな集まって地域医療が崩壊してしまう」「地域医療にとどめを刺す気なのか」などと、ずいぶん厳しいことを言われました。そうした声を聞くにつれ、「なるほどな」と思い、「本当にそれでいいのか」という考えが大きくなっていったのです。

 もともと専門医制度は、医師のプロフェッショナルオートノミーを尊重して日本専門医機構にお任せしてきた問題ではありますが、こと地域医療に関しては医療法上、我々が医療提供体制の確保に責任を持っています。知事や首長も、地域医療に責任を持つ立場から、新専門医制度への懸念を表明していました。

 ですから機構に対して、「本当に大丈夫ですか」「これだけ多くの人が心配しているのだから、一度立ち止まって学会の皆さんと確認していただけませんか」と申し上げたわけです。その結果、1年、制度開始を延ばすこととなったという経緯です。

国民医療費は40兆円を超えて伸び続けており、医療保険制度の持続性に対する懸念が高まっています。この点についてはどうお考えですか。

 40兆円という額が多いか少ないかはともかく、高齢化が進み医療が進歩すれば、方向として医療費が増えていくことは間違いありません。大事なことは、本当に必要な医療を守りながら、皆保険制度の持続可能性を堅持していくことです。そのために我々は、絶えず見直しをしていかなければならないと思っています。