福島の体験者が1000人近くになると企業文化が変わったのでは?

浪江町役場で宮口勝美副町長から、帰還者が少ない窮状を聞く。被災地の中に入って、できることを探す(写真:野口勝宏)

ビルの中に答えはない

:ありますね。やっぱり東京のビルの中で仕事をしていると、立ち位置が非常に見えづらくなってくるんです。それが、被災地ではヒト、モノ、カネが何もない、理不尽とも言える状態の中で、みなさんが努力を積み上げられている。その姿を社員が見た時に、やっぱり自分の日常を振り返りますよ。これまでの自分の仕事への向き合い方とか、努力とかいうものに対して、思うところが出てくる。まあ、文句ばかり言っていたけど、もっと自分もできるんじゃないか、というような思いを強くする社員が増えている。

 この研修を受けた社員たちは、「もっと現場に自分たちが出ていって、直接自分で見聞きしないとダメだ」という、現場の大切さを痛感していると思います。ビルの中で考えても答えはない、と。

これだけ福島で研修を重ねるのは、やはり経営トップの考えが大きい。

:「人間尊重」という経営の強い思いがありますのでね。社長の金子(眞吾氏)が講話で話した言葉で、「社員一人ひとりの成長が会社の成長であり、一人ひとりの競争力が会社の競争力」「選ばれた誰かではなく、すべての社員一人ひとりが毎年、成長することが大切だ」というのがあります。

人材開発が手厚いのは、優秀な人材を囲って鍛えるのではなく、すべての社員が学べる環境を提供するという意思があると。

:ですから、福島にこんなに行くことができる。それも経営の意思があるからですね。

カネもかかります。

:これ、全国から集まっていますから。しかも毎月やっています。だから、移動だけでも、すごくカネと時間がかかっていますけど、それに関して「削減しろ」とか、そういう話はまったく出てこない。

では来年度も続ける。

:いろいろなものを取り入れてやっていきたいと思っていて、いま調整中です。我々の社員がどこを見るべきなのか、何を学ぶべきなのか、それを考え(研修体系を)構築中です。

 半谷さんの研修もどんどん進化しているし、別のスキームでいわき市にも行かせていただいている。神戸に行くプログラムもあって、それは阪神・淡路大震災から20年以上が経っているからなんですね。20年でどれだけ復興したのか、という文脈も見て考えていきたい。すると、「福島の今」というものを構造的に捉えられるのではないか、とも思ってやっているところです。



3月11日で東日本大震災から7年を迎えます。被災地の復興が進む一方、関心や支援の熱が冷めたという話もあちこちから聞こえてきます。記憶の風化が進みつつある今だからこそ、大震災の発生したあの時、そして被災地の今について、考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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