東京の就活生を東北の中小企業に就職させる――。こんな試みが「復興のトップランナー」と呼ばれる自治体の一つ、宮城県女川町で始まった。中小企業の社長の右腕として2年間働き、そのまま中小企業に残る、自ら起業、東京で転職、など改めてキャリアを選択する(本誌連載のPART2参照)。米国の「ベンチャー・フォー・アメリカ」と呼ばれる取り組みを応用したもので、小規模でも経営の最前線にいる経験をすることをキャリアのステップの一つとして確立させようという試みだ。

 企業再生の第一人者である経営共創基盤の冨山和彦CEO(最高経営責任者)はこの右腕派遣事業の協賛者だ。「東京の企業は地方に人材を解放しろ」と唱える同氏に、東北、そして地方と東京の関わり方はどうあるべきか、話を聞いてみた。

東京の学生を東北の中小企業に送り込む事業に協賛されていますね。

冨山和彦氏(以下、冨山):事業を主宰するNPO法人のアスヘノキボウにはずっとメンターの立場として関わってきました。復興モードが終わった時、持続的な社会システムが東北に存在していくためには稼げる経済活動の主体がないとダメ。しかも、未来に向かって希望が持てるものじゃないと若い人は集まらない。こうした問題にアスヘノキボウは取り組もうとしています。

 地方に税金の再分配で仕事をつくっても持続性がない。東北は震災復興でまた投資が起きたが、そろそろ元々の地方としての問題に向き合わないといけない。悲劇的イベントではあったけど、震災をトリガーにして流れを変えようとしている人がいます。アイリス(オーヤマ)の大山(健太郎)社長などが本来の地方創生を追い求めて活動している(こちらの記事も参照)。地方を引っ張っていくのは企業。だから、地方に競争力ある企業を増やさないといけない。

冨山和彦(とやま・かずひこ)氏
ボストンコンサルティンググループやコーポレイトディレクション代表取締役をへて、産業再生機構の設立に参画。解散後に経営共創基盤を設立。日本航空やカネボウなどの企業再生に関わってきたことで知られる。東京電力ホールディングスの社外取締役も務める(写真:陶山 勉)

IT企業の誘致に成功したある地方では、結局労働人口が不足して、地場の中小企業が人を採れなくなったと嘆きの声が出ているとか。企業誘致のようなこれまでの地方創生の取り組みは、日本全体の人口が減って行く中で、限界が見えてくるかもしれません。

地方企業にデメリットはもうない

冨山:地場中小もぽっと出のIT企業に負けててどうすんの、とは思いますけどね。 そんな労働の枠を増やすことしかできない企業は日本にはいらなくなります。だって労働力が足りてないんだから。より高い賃金でより安定した仕事を作り維持する。そんな幸せを生む会社だけが重要です。自分のビジネスになぜ人が集まって来ないか、真っ正面から対峙しないと問題の解決にならない。

そんな幸せを生む企業をつくる上で、地方には場所としての利点はありますか?

冨山:年収ですよ。500万円あれば、社員は幸せと言えるでしょう。

逆に不利な点は?

冨山:ほとんどない。情報格差ももうない。あえて言えば、一晩中大騒ぎしているような繁華街がないことぐらいじゃないですか。ただ、それが本当に大事なのか。もし繁華街で夜通し騒ぎたいんなら、夜行バスで東京に0泊3日でいけばいい。